社内データをAPI化する際に注意すべき7つのこと

今後、企業間連携においてAPIをベースにするのはごく当たり前になっていきます。その時、提携が決まってからAPIを開発しているのではとても昨今のビジネス環境の変化に追随できないでしょう。

そこで将来を見据えた上で社内データをAPI化する際に注意して欲しいポイントについて挙げていきます。

1. 24時間365日のアクセスを想定する

社内システムは一般的に営業時間中しかアクセスされません。そのため夜中にシステムを停止したり、バックアップなどの高負荷な作業は深夜に行うのが一般的です。しかし社内データを公開するとなると、そのデータへのアクセスは24時間/365日、いつでもどこからでも行われると想定する必要があるでしょう。

そのためデータベースを停止してバックアップするような運用はできず、オンラインでのバックアップや構成変更も行えるようになっていなければなりません。停止する場合はそれを想定した仕組み(適切なエラーコードを返すなど)を行ったり、数週間前から告知するなど運用面も考えなければならないでしょう。

2. 公開範囲を決める

社内データをAPI化=全データを無制限にアクセスさせるという訳ではありません。その公開範囲をきちんと決める必要があります。ただし、あまり絞りすぎると利用者にとって魅力的なものではなくなりますし、広げすぎると不要な情報漏洩を招く恐れがあります。

やり方として、最初は絞り込んで限定されたパートナーのみに公開し、フィードバックをもらいつつ必要な情報をオープンにしていくという方法があります。API作成側ではすべてのニーズを想定するのは難しく、実際の利用者から意見をもらいつつ進めるのは質実剛健でありお勧めです。

さらに業務システムでは大量のデータを必要としたり、グルーピング(集計)したいというニーズがよく出ますが、これをデータベースまま操作すると高負荷になってしまうことがよくあります。適度に集計結果を別テーブルに移しておいたり、最新データと過去データを分割して管理するといった工夫が必要です。データに触れる人が増え、かつ皆が重たい処理を行うとこれまでにない以上にサーバのレスポンスが落ちることでしょう。

3. 作成/更新/削除できる箇所を決める

公開は情報の発信だけですが、これではAPIの作成およびシステム連携を行う上では片手落ちと言えます。新規データの作成、更新および削除という、いわゆるCRUD操作ができてはじめて意味のあるものになるでしょう。

データの操作を行わせる範囲についてはデータの取得以上に注意が必要です。さらに間違った修正に対応できるように差分を残しておいたり、トランザクションを必要とする更新を望まれることがあります。APIにおいてトランザクションを実装するのはとても困難ですが、バッチ処理的な方法であれば実装しているところもあります。

4. 認証およびログを取る

データを誰が参照して、誰が更新したかを記録するのはとても大事なことです。社内の監査システム以上に厳しくデータを記録しておく必要があるでしょう。APIは一気にデータを削除できる可能性もありますので、フィードバックできるようにデータを残しておく必要もあります。

また、不正なアクセスにも対応しなければなりません。アクセス元を記録したり、アクセス方法によっては不正なアクセスであると検知できなければいけないでしょう。そういった認証とは別なアクセス権限についても考えるべきです。

5. 既存ワークフローに悪影響を及ぼさない

社内データはすでに社員によって扱われているデータになります。そうしたデータをオープンにした結果、ワークフローに遅延が生じたり、不具合によって業務が回らなくなってしまうような自体は防がなければなりません。

API化が既存業務にマイナスの影響を与えると、次のAPI化において反対する人が多くなるでしょう。APIの公開に伴ってビジネスの拡大はもちろんのこと、業務コストの低減やスピードアップがはかれるかどうかは大事な指針といえます。

6. セキュリティを重視する

社内データは企業にとっての要といえます。それだけにセキュリティについては重視しなければならず、しすぎということはありません。実際、API公開する中で使われる機能は1つか2つだけかもしれず、残りの殆どの機能は使われない可能性があります。

そうした使われないAPIというのはメンテナンスされず、セキュリティリスクになりやすいものです。頻繁によく使われるものを重視して公開すべきでしょう。

7. すでにある仕組みに則って開発する

例えば認証であればOAuth2であったり、OpenIDといった標準プロトコルがあります。RPC(リモートコールプロシージャ)やREST APIについてもすでに数多くのライブラリが作られており、そうした技術標準に沿っておくことは後々のメンテナンス性、拡張性を考えた上でも利点があります。

企業においては独自指向になりやすい傾向があり、その結果として時代に取り残された使い勝手の悪いAPIが残されていきます。複数の企業とのシステム連携を考えるならば、なるべく業界標準になっている仕組みに合わせた実装を行いましょう。


エンタープライズのAPI活用においては自社基幹システムに入っているデータを公開するのはとても大事なことになります。ただし何も考えずにただ公開すると大きな問題になりますし、かといってリスクばかりを考えて絞り込みすぎるのも問題です。リスクとメリットを鑑みた上で、プラスになるポイントを見極める必要があるでしょう。

ぜひ自社データのオープン化について考えてみてください。

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