去る2017年11月22日、五反田のDEJIMAにてEnterprise APIs Hack-Night #12「HRTech」が開催されました。HRはヒューマンリソース(Human Resource)の略で、HRTechとは人事労務系テクノロジーになります。
今回はfreee社(山本 伶さん)とネオキャリア社(野海 芳博さん)にご登壇いただきました。
労務管理の効率化から人事労務のプラットフォームへ by 山本 伶さん@freee株式会社
freee社は人員が急激に増えており、山本さんが入社した頃(20人)と比べてなんと20倍にもなっています。その結果、起こっているのが人事担当者の業務多忙化です。毎月の給与はもちろんのこと、入社手続きや市民税県民税の対応などが頻繁に行われています。年末になるとよく知られている年末調整もあります。
本来、人事担当者は全社的な人員配置であったり、従業員のモチベーション管理などに注力したいのですが、日々の業務が多忙であるためにそうした本来すべきところに手が回らなくなってしまっているそうです。そうした細かいオペレーションを補助できるのが人事労務freeeになります。
人事労務freeeは最初、給与計算freeeとしてスタートしています。そしてe-Gov APIという総務省系のAPIに国内初対応し、入社手続き機能などを追加していった結果、現在の人事労務freeeとなっています。
人事労務でよくあるのが紙多すぎ問題です。役所などに届ける必要がある用紙などはすべて紙ベースという問題があります。それが一歩発展してもExcelの種類が増えたり、個人のナレッジに頼った運用が行われます。そして役所も縦割り社会であるために、保険事務所や年金事務所などがすべて別な場所にあって回るのが大変という問題もあります。その結果として業務フローが分断され、複雑になっています。
人事労務freeeではそういった問題を解決したいとのことです。最新の情報が一元管理され、かつPDFによるペーパーレス化が進められています。freee社自身、ペーパーレス化が強く求められているとのことです。給与明細の自動計算や、備え付けが必要な書類を自動で作成、保管しています。
ここからは未来の話になりますが、人事労務freeeが目指しているのは業務効率化の先にある本来人事が行うべき役割のサポートになります。最適な人員配置、生産性やコスト分析、採用サポート、評価制度の運用、ヘルスケアなど企業として投資すべき領域にも踏み出していきたいとしています。そのためにも、まずは現状の業務を徹底して効率化していく必要があります。
人事労務freeeや会計freeeの利点は企業におけるお金の動きのハブになっている点です。これらの情報を活かすことで、企業の全面的バックアップが可能になるのではないかとしています。現在、人事労務freeeではAPIを準備しており、それによって企業内のBIツールとの連携やチャット、タイムカードとの連携などが考えられます。山本さんはAmazon Dashボタンを使って出退勤を打刻できるボタンを作ってみたいと話されていました。
freeeを使うことで業務の効率化が可能ですが、さらにAPIを使うことによってHRTech業界全体の活性化を促していきたいとしています。とかく煩雑な業務になりがちな人事労務をホワイトな環境にし、多様な働き方を実現したいとのことです。
jinjerによる"人事"の見える化と共に描く未来 by 野海 芳博さん@株式会社ネオキャリア
Jinjerは採用管理サービスを提供しています。日本全体における人口減少が続く中で、求人需要が増しています。しかし採用プロセスは各社複雑で、それにかかる時間も長くなっています。その効率化を支援しています。
当初、共通アカウントと呼ぶデータベースを構築し、それを中心として全サービスを疎結合で連携しようと考えたそうですがうまくいかなかったそうです。クライアントで解決しようとしすぎる結果、処理が長くなったり非効率的な処理によって負荷が増大してしまいました。現在、システム全体を見直しており、効率的なシステム構築が進められています。
Jinjerでは今後、組織管理や組織改編に伴う予約投稿など組織図の変更にも対応していくとのことです。また、大手の企業では自社内に人事系のシステムを構築していますので、それらとJinjerの採用管理サービスを接続していきたいとしています。
一例として紹介されていたのがエンゲージメントアラートです。従業員の出退勤時の打刻と同時に顔写真を撮影します。その際の表情を分析にすることによってエンゲージメントを7段階で判断しています。小さなチームであれば各メンバーの顔が分かるので問題ありませんが、数十人や百人を超えるチームでは全体の把握は容易ではありません。モチベーション低下やキャパシティオーバーなどを早期発見できるとしています。
ここからは未来の話ですが、登録されている組織図や就業規則を解析して、本当に組織の現状にあった就業規則なのかどうかを判断できるようになるのではないでしょうか。また、人員の組み合わせによってはパフォーマンス低下が推測されるといった人工知能の活用も考えられるとのことです。
API周りとして労務管理ではe-Gov API対応していたそうですが、使っていたバージョン1に対して最新版であるバージョン2は対応している項目が多いそうです。しかしバージョン2では状況照会ができない問題があり、現在対応を取りやめているそうです。
人材開発のトレンドキーワード by 土岐 哲生さん@NTTコミュニケーションズ株式会社
今月から人事に配属されたこともあり、まず人事業界の状況を分析されています。そのため、日本で行われている講演を400以上分析してみたところ、採用活動や働き方改革といったキーワードが浮かび上がってきました。対してアメリカではオキシトシン、心理的安全性、マイクロ・ラーニングといったキーワードが出てきます。日本では企業事例的な内容が多く、対してアメリカではより科学的分析やアプローチが話にあがっているとのことです。
海外ではミレニアム世代が中核メンバーとして育ってきており、従来の教育法は通用しなくなっています。そこで注目されているのが1〜2分の教育を毎日繰り返すマイクロ・ラーニングだそうです。他にも習得が遅れている人同士をマッチングして相互サポートする仕組みも注目が集まっています。
この後、懇親会が開催されました。人事労務はまだまだ手作業が多く、非効率的な業務が多い分野でもあります。そのため、テクノロジーによって改善できる余地が多い領域でもあります。また、各社の取り組みに興味がある方が多いようで、どういった施策がとられているのか熱心に話されていました。
Enterprise APIs Hack-Nightでは引き続きビジネスにおけるAPI活用をテーマにイベントを開催していきます。興味がある方はConnpassのページにてグループに参加してください。新しいイベントが作られた際に通知メールが届くようになります。ぜひご参加ください。