はじめまして。データプラットフォームサービス部の橋本です。
今回は、11/20(土)に開催したTechWorkshop「プロのネットワークエンジニアと学ぶ!ISPネットワークのつくりかた」について紹介します。
TechWorkshopとは
各技術分野のプロフェッショナル社員がお届けする、当社の最先端技術を体感し、また身に付けることができるワークショップ形式のプログラムです。 (公式ページより抜粋)
過去にはこのようなワークショップを開催しました。
- ソフトウェア開発ハンズオン
- Kubernetesハンズオン
- CI/CDハンズオン
- サイバー攻撃対応ハンズオン
- ソフトウェアエンジニア座談会
どのワークショップも、公式ページの説明の通り、各分野を主な業務にしている社員が講師となり、かつ自分たちでイベントの企画・運営をしています。
今後もいくつか開催予定ですので、興味のある方はTechWorkshopのページをウォッチしていただき*1、ぜひ参加申込をお願いします。
「プロのネットワークエンジニアと学ぶ!ISPネットワークのつくりかた」とは?
本ワークショップ「プロのネットワークエンジニアと学ぶ!ISPネットワークのつくりかた」では、ISPネットワークで利用されているような機器やプロトコルを用いて、ハンズオン形式で実際にネットワークを自分の手で作っていただくといった内容となっています。
ネットワークについていざ勉強しようとしたとき、学校の講義に出たり、書籍を読んだけど実際に触れる機会がない!と思ったことはありませんか? ネットワークの学習には、費用や環境などの制約により、「実際に手を動かしてネットワークをつくって身につけていく」ということが難しい側面があるのではないかと感じています。 我々はこのような課題に対し、ネットワークを勉強している学生のみなさんにも実際の機器に触れてネットワークをつくることができるような機会を提供することで、より多くの方々にネットワークに興味を持っていただきたいと考えています。
また、実際のネットワークに関連した業務につくNTT Comの社員と身近な距離でふれあい、ネットワークを基盤とした価値を提供するNTT Comの会社そのものにも興味をもっていただければいいなと思っています。
ワークショップは大きく分けて午前の講義と午後のハンズオンの2パートに分かれており、1日を通してISPネットワークのつくりかたを体験していただくことができます。 午前は、ハンズオン形式でのワークショップに取り組む前に、必要なネットワークの概念やプロトコル、運用にあたって考慮すべきことなどを学習します。 午後は、午前の講義で学習したプロトコルや考え方に基づき、実際にネットワーク機器の設定を自らの手で行います。
- 午前
- 座学・スライドを用いた講義
- ネットワーク/インターネットの概要
- ネットワーク設計の考え方.ルーティングとは何か?
- 各種プロトコルの紹介(OSPF/BGP/etc...)
- ISPネットワークを取り巻く課題と技術(運用/DDoS/BGP Flowspec/etc...)
- 社員のお仕事紹介
- 座学・スライドを用いた講義
- 午後
- ハンズオン
- 進め方やゴールの説明。基本的なルータのコマンドなどの説明。
- インタフェースのアドレス設定
- ルーティング(OSPF/iBGP/eBGP/static)の設定
- 自分の作ったネットワークでインターネットに通信ができるか検証
- エクストラステージ
- 障害を起こしてみよう
- ルータの設定自動化
- ???(参加者だけのお楽しみ)
- 懇親会
- ハンズオン
それぞれのパートについて詳しくご紹介します。
(午前)座学・スライドを用いた講義
講義は、実際にISPネットワークの設計・運用に携わっているメンバーを含むNTT Comの社員が行い、現場で実際に用いられている知識やノウハウなどを直接お伝えします。
ルーティングの基礎から1つずつ説明していきます。ルーティングって何?という学生の方でも大丈夫です。すでに理解されている方も、もう一度振り返って再確認します。
講義の後半ではより高レベルな、現代的なネットワーク技術についても紹介します。
講義で気になる点や不明な点がある場合にはチャットを用いて社員がその場でお答えしていきます。 参加者の方々からは活発に質問が飛び交い、中には社員でも回答に悩むような非常に鋭い質問も見受けられました。
社員のお仕事紹介
今回は、お昼ごはんを食べる前に、社員が実際にどのような業務を行っているかを紹介するコーナーを設けてみました。
ネットワークに関する仕事として、多種多様な業務があります。 このハンズオンには、複数の異なる部署からさまざまな業務を経験してきた社員が参加しています。 異なる経験を持つ複数の社員から、業務の幅広さや、実際の現場では具体的にどういうことをやっているのかという現場の声を直接お伝えすることで、よりネットワークやそれにまつわる仕事に興味を持っていただくことができるといいなと考えています。
今回は下記の業務について紹介しました。
- OCNのネットワークコントローラを作ってる話*2
- GIN(Global IP Network) US-NOCとトラフィック分析
- IXやIPoE関連の業務について
業務についてもたくさん興味を持っていただけたようで、業務紹介をした社員に対して、業務をより深堀りするような質問を多数いただきました。
(午後)ハンズオン
さて、お昼ごはんを食べて休憩をとったあとはこのワークショップのメインであるハンズオンに取り組みました。 ハンズオンでは、ミニISPを作るというお題に沿って実施していきます。ISPなので、実際のユーザ相当のネットワークからインターネットに到達できることを満たす必要があります。 耐障害性、運用性などといった様々な視点で考え、複数のプロトコルを用いてルーティングの設定をします。
このミニISP環境は、複数台のルータを仮想環境上に構築しており、5つのルータからなる環境が個人それぞれに割り当てられます。 1人1環境割り当てられているので、他の人と競合したりせず、割り当てられた環境の中で自由に設定を変えることができます。 ネットワーク機器は共同利用者がいる場合が多く、自分1人で占領して使うのが難しいケースがあると思いますが、このハンズオンではあなただけのISPであり、構築から運用、障害試験までを全て経験できます。 この環境を使って、1つずつルータに設定を自らの手で投入していきます。
ハンズオンは参加者数人と社員2名ごとのグループをつくり、step-by-stepで時間を区切って行っていきます。 わからないことがあったり、設定したのにうまく動かない!といったことがあれば同じグループの社員にいつでも質問できます。 社員も理解をより深めてもらうために積極的にサポートします。
1つのステップごとに社員が設定方法や確認方法を解説する時間を設けています。 設定がまったくわからない、設定したはずなのに思い通りに動かなかった、ということがあっても大丈夫です。 この解説で改めて理解を確認し、社員と一緒に設定しましょう。
このように少しずつ段階を踏んで自分のISPネットワークを作っていくと、最後にはお客様のネットワークからインターネットに到達できるようになります。
ある社員いわく、「ping通った時がうれしいからこの仕事はやめられない」だそうです。 これには多くの社員も共感していました。参加者の皆さんにもこの気持ちを感じていただけたなら嬉しく思います。
エクストラステージ
ハンズオンで無事お客様にインターネットへの接続性を提供できた方々には、エクストラステージにチャレンジしてもらいました。 エクストラステージは、自分の作ったミニISPネットワーク上で、運用等も視野に入れたより実践的なシナリオを解いていく内容になっています。
詳しくは参加者だけの秘密にしようと思いますが、はじめの1つについて少しだけ紹介します。 それは「自分のISPを構成しているリンクのうち、あるリンクが切れた場合の動きを観察せよ」といった内容です。 ネットワークの設計では通常、あるリンクが切れたり、ノードが故障することを事前に想定した冗長設計をします。 今回はリンクが切れたときにダイナミックルーティングが想定通り動作し、適切なルーティングが行えるか、お客様への影響を小さくすることが出来たかといった観点で観察してもらいます。 ルーティングプロトコルをより詳細に理解してもらうことを狙っています。
経路の切り替わりを、トラフィック量の変化で観察してもらうと、より直感的に理解してもらえるのではないかと考え、今回はSNMPでトラフィック量を可視化するツールを提供してみました。
traceroute
などのコマンドと併用して、意図したとおりに切り替わっていることを確認します。
ほかにはconfig設定の自動化などに取り組んでもらえる内容も用意し、実践的な取り組みにもチャレンジしていただきました。
ここまでで午後のハンズオンの内容は終了です。参加者の皆様は普段慣れないルータの設定、コマンド操作、複数台にわたる設定といった、非常に多くの作業をこなし、終わった頃には相当の疲れと達成感があったのではないかと思います。 しかし参加者からは、「もっと長くハンズオンをやりたかった」などの声もあり、想像を超える熱意を嬉しく思っています。今後こういった声にもお答えできるように改善を検討させていただきます!
ハンズオンのあとには休憩を挟んで、参加者と社員を含めて懇親会が行われました。お互いに疲れを癒やし、交流を深めていただける場となりました。
参加者の声
参加者の皆様からは、事後アンケートにて下記のようなコメントをいただきました! やはり、「実際に手を動かしてつくる」といった部分が好評いただけているようです。
- 午前中に、わかりやすく丁寧な講義をしていただき、午後からはそれを手を動かして実践できたことで、ルーティングに対する理解が深まったと思う。
- ハンズオンでは、BGPやOSPFの基本的な設定から、LPやコストといった実践的な設定に触れることができたので、とても良い経験になりました。
- NW入門ではISPがどのようなことに気を付けて他ASとBGPでやり取りしているかよくわかった。
- ISPネットワークのリアルな現場を感じられる体験だった。また様々な分野の社員の方々とお会いしNTT Comの事業の幅広さとネットワークだけでも細かな多様な専門性を持つ部分を感じることが出来た。
- 想像以上に内容の濃いイベントでした。ネットワークの知識は授業で受けた程度だったのでとても勉強になりました。
- 他の参加者の皆さんもすごく知識があって、これからもっと頑張らないといけないと再認識できました。
ネットワークの勉強をする際の「実際に手を動かして学習する」部分の障壁、座学や本による学習では学びにくい実践的な部分をたくさん吸収していただけたようです。社員としても嬉しい限りです。 また、学生同士でのコミュニケーションも活発に行われており、同年代の参加者同士で互いに切磋琢磨する種になったり、参加者自らの刺激になったようでした。今後も継続してネットワークの分野を盛り上げていっていただけると嬉しいですね!
まとめ
この記事では、2021年11月20日に開催した、TechWorkshop「プロのネットワークエンジニアと学ぶ!ISPネットワークのつくりかた」について紹介しました。 ワークショップを通じて、よりネットワークに興味を持っていただけたり、よい刺激となっていたならば幸いです。 社員も学生の素直な疑問や鋭い質問に答えられるように邁進していきます。今後のイベントにもご期待ください。
さてこのTechWorkshopですが、来年1月頃にも同様の内容で開催予定なので、この記事を読んで興味を持った学生の方は、ぜひ参加申し込みをお願いします! また、「プロのネットワークエンジニアと学ぶ!ISPネットワークのつくりかた」以外にも複数のトピックで開催を予定しています。 NTT Comのイベント紹介のページから興味のあるトピックに申し込みをしてみてください。皆様のご参加をお待ちしております!
*1:NTT Com公式Twitter でもご案内します。