チームの「混乱期」を乗りこなすために 〜「ウェルビーイング」の共有で深める相互理解〜


この記事は、 NTT Communications Advent Calendar 2024 21日目の記事です。

本記事では、メンバーそれぞれの個性が強すぎるが故に衝突して空中分解寸前だったチームの状態と、それを解決するツールとして「わたしたちのウェルビーイングカード」を活用し、チームの相互理解が進んだ話をしていきたいと思います。

はじめに

こんにちは。イノベーションセンター IOWN推進室のつかごし(@22nu_n)です。昨年に続き、今年も12/21を担当します。

昨年のアドベントカレンダーでは、イノベーションセンターのValuesである「『枠』を越えよう」にちなみ、提案資料改善を通して、個人としての視点だけに頼らず、チームとして複数の視点を持って新たな価値観を得たことで、“わかりやすく伝える”ことにつながったというお話をしました。

イノベーションセンターのValuesは残り2つの要素からなります。今年はそのうちの「Implement First」にちなみ、チーム内での衝突や食い違いが起きるフェーズをどうしのいだか、課題意識を持っていたチームの状態に対し、自分なりに仮説を立てて、まずは行動をしてみたという経験を綴りたいと思います。新規事業開発組織に属し、同様の状況下にある方の励みや一助になれば幸いです。

なお、内容は個人の見解にもとづくものであり、所属組織の総意ではないことをご了承ください。

チームに訪れた“混乱期”

組織が結成されて1年。メンバーはある程度揃いプロジェクトを推進する体制が整った!みんなで頑張っていくぞ!と思っていたのに…… 意見は対立するし、認識は食い違うし、ミーティングはいつも延長戦に突入する、あちこちで不満の声が出ている。そうこうしていたら、プロジェクトが遅延している!あのプロジェクトでも、このプロジェクトでも…… 例えば、Aさんが必要だと思っているプロセスに対して、Bさんは不要だと思っているため、協力体制を築くことができず、議論は平行線を辿り、プロジェクトの進捗は遅々として進みませんでした。

どうしてこのような状況に陥ってしまったのか。原因を探ってみました。 いくつか原因はありましたが、特に以下の3点がボトルネックになっていました。

  • メンバーが忙しい:他部署と兼務している方が多く、結果としてそれぞれの部署での打ち合わせ予定とこちらの部署での打ち合わせ日程が重なってしまったり、それによって打ち合わせに最初から最後までフル参加が難しいことが増えていた
  • チーム体制の頻繁な変更:プロジェクトの状況に応じて、メンバーの入れ替わりが頻繁に発生していた
  • 信頼関係の構築不足:さまざまな組織から人を集めたにもかかわらず、勤務形態がフルリモートで顔を合わせる機会が少なく、信頼関係を築く時間が不足していた

心理学の知見を借りれば、これは「タックマンモデル」の「混乱期」に当てはまります。 「タックマンモデル」とは、心理学者のブルース・W・タックマンによって提唱されたチームビルディングに関する考え方で、組織は体制を整えただけで完了ではなく、さまざまな問題の解決を行って理想の組織にしていく必要があると説いています。 形成期、混乱期、統一期、機能期、散会期の5段階を辿るのですが、「混乱期」ではメンバー間の対立や混乱が生じやすい時期とされ、まさに私たちのチームはこの渦中にあるといえました。

相互理解を深める機会の必要性

このような「混乱期」を乗り越えるために、まずはチームの相互理解を深める機会が必要なのではないかと思いました。 例えば、物事がうまく進まない時、足を引っ張っていると感じた人を糾弾したくなってしまうことがあります。しかし、“足を引っ張っている”と感じた行動は、その人の価値観や経験によって醸成された固有な考えに基づいています。そのため、チームとして仕事をするためには、お互いの価値観や経験を共有し尊重していくことが大切です。

お互いの価値観や経験を共有する手段があれば、円滑なコミュニケーションや共通認識の形成を図ることができ、今の状況から脱することができるのではないかという仮説を持っていたところ、 偶然にも「わたしたちのウェルビーイングカード」を使う機会に恵まれたので実践してみることにしました。

「わたしたちのウェルビーイングカード」を用いたチームビルディング

「わたしたちのウェルビーイングカード」は、NTT社会情報研究所 well-being研究プロジェクトで制作された“自身や周囲の人々のウェルビーイングに意識を向け、対話をうながすツール”です。 これにより、気軽な相互理解の場を持つことができ、各自が秘めていた大切にしていることを認識できます。

今回は、“自分にとって大切なことを3つ選び、それぞれ選んだ理由やエピソードを共有する”という使い方をしました。 ある方は「挑戦」という言葉を挙げ、「常に新しいことに挑戦したい」と語り、一方で、別の方は「社会貢献」という言葉を選び、「社会貢献につながる活動をして誰かの役に立ちたい」と話したり… また、力強いリーダシップを大切にしていると感じていた方が実は「平和」を大切にしていたり… 全く違うタイプだと思っていた方々が実はほとんど同じ言葉を選んでいたり… 発表するたびにどよめきが起き、活発な対話が生まれました。

このように、普段同じチームで働いていても仕事をする上で大切にしていることは異なります。しかも、個人が最も大切だと思っていることを、周囲はほとんどわかっていないことがわかりました。 これでは、相手を思いやって発言・行動したつもりが、かえって相手の価値観を否定していたということもありえます。このような状態が日常頻繁に起こっている可能性が高いことを、発表の時の皆さんの「どよめき」が示しているのではないかと考えています。

これまでのことを思い返してみると、とある方がさまざまなアドバイスをかけてくださっていたのですが、私はそのアドバイスが理解できず苦しいといった状況に陥ったことがありました。 当時は「あの人は私のことを考えて相談に乗ってくれているのに、何故私は素直に受け止められないのだろうか?」と悩みましたが、今回の経験で自分の価値観と相手の価値観が全く異なることが根本的な原因だったのではないかと気づきました。

相手にとってよいとされる状態が私にとってはそうではなかっただけで、お互いに価値観の共有ができたら寄り添い協働していくことができるのだと実感しました。 メンバーの心の根底にある大切にしていることを、外から観察・類推するのではなく、本人から語る機会を作り、認識することで、チームメンバー一人ひとりの心を繋ぎ、協働して行けるのではないかと思います。

効果や反響

まだ全ての物事がスムーズに進んでいると言える状況ではないですが、最悪の膠着状態からは脱することができたと思います。 「このように対面で顔を合わせてお互いの価値について話す時間はとても良かった」とメンバーから大変好評でした。

この経験を経て、メンバー同士が相手の価値観を理解し、互いの価値観を尊重することで、チームが前に進むことに気づいた人が増えていたら嬉しいです。

今後に向けて

チームで抱える課題を解決することは並大抵のことではありません。今後もチームの相互理解を継続的に行い、これからも次々に来るであろう「混乱期」の波を、みんなで乗りこなしていきたいと考えています。 いつか「あの期間があったから、チームとして強くなれた」と振り返る時がくることを願い、これからも様々なことを試し、よりよいチームの状態を追求してみたいです。

おわりに

今回は「わたしたちのウェルビーイングカード」を活用したワークを通して、各々の「ウェルビーイング」を共有し対話をしたことで相互理解が進み、チームが前進するきっかけになったというお話をしました。 「混乱期」のメンバー間の対立や混乱は、メンバー間で価値観の共有ができておらず、協働体制が構築できていないことに起因します。メンバーそれぞれ価値観が違うということを前提に仕事を進めていくことが大切です。 自分自身だけでなくチームメンバーの「ウェルビーイング」に目を向け、チームとして最大限の成果を上げていきましょう。

最後まで、ご覧頂きありがとうございました!それでは、明日の記事もお楽しみに!

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