セキュリティカンファレンス「Botconf 2025」に登壇してきた話

こんにちは、NTT Com イノベーションセンターのNetwork Analytics for Security(NA4Sec)プロジェクトです。 この記事では、2025年5月20日-23日に開催されたセキュリティカンファレンスBotconf 2025について紹介します。

Botconfとは

Botconfは"The Botnet & Malware Ecosystems Fighting Conference"の略称で、その名の通り、ボットネットやマルウェアエコシステムに特化した国際的なセキュリティカンファレンスです。

2013年より毎年フランスで開催されており、昨年はNice(ニース)、12回目となる今年はAngers(アンジェ)*1で開催されました。

本カンファレンスでは、法執行機関・学術機関・CSIRT・脅威分析チームなどを中心に世界中のさまざまな組織から約400名が集結し、最新の分析結果について共有します。

特徴的なのは、その情報共有の深度です。 一部の講演はYouTubeで公開される一方、TLP(Traffic Light Protocol)*2への配慮が徹底されており、オープンな場では共有できない、クローズドなコミュニティだからこそ話せる貴重な情報交換が活発に行われます。

Team NA4Secとは

「NTTはインターネットを安心・安全にする社会的責務がある」を理念として、インターネットにおける攻撃インフラの解明・撲滅を目指すプロジェクトです。 NTT Comグループにおける脅威インテリジェンスチームとしての側面も持ち合わせており、有事において脅威インテリジェンスを提供し、意思決定を支援することもあります。 イノベーションセンターを中心として、NTTセキュリティ・ジャパンやエヌ・エフ・ラボラトリーズからもメンバーが参画し、日夜攻撃インフラ*3を追跡しています。

今回、Team NA4Secから皆川、神田、鮫嶋の3名がBotconf 2025で講演してきました。

講演内容

NA4Secからは"Operation So-seki: You Are a Threat Actor…"というタイトルで、親ロシア派ハクティビスト*4グループを長期追跡した分析結果について講演しました。

講演では、ハクティビストを追跡するための技術手法や、それによって明らかになった長期的な活動傾向について共有しました。 さらに、こうした政治的背景を持つ攻撃者と対峙する中で得られた学びとして、「脅威アクターの性質に合わせたインテリジェンス共有」の重要性を提言しました。

非常にセンシティブなテーマでしたが、講演後にはヨーロッパの法執行機関や軍の関係者の方が直接私たちの元へ訪れ、深い関心を示してくれました。 また、「インテリジェンス共有」のパートについては、フランスやインドのリサーチャーからも「我々も全く同じ問題意識を持っている」と声をかけられ、国を越えて意気投合できたのは大きな収穫でした。 現在、日本国内で能動的サイバー防御が大きな展開を見せる中でも、海外の有力な会社・組織と個別の繋がりを築くことができたのは大きな意義があると感じています。

登壇者の鮫嶋(左: @islairand)、神田(中央: @ashy0x41)、皆川(右: @strinsert1Na)

本講演で扱った情報の多くは会場限定となりますが、公式サイトに講演資料が掲載されていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

https://www.botconf.eu/botconf-presentation-or-article/operation-so-seki-you-are-a-threat-actor/

カンファレンスの様子

カンファレンス会場は"Le Parc des Expositions d'Angers"という施設で、アンジェの中心部からバスで20分ほど離れた場所に位置しています。

会場内は広く、多数用意された座席も人気の発表時にはほぼ満席になるほどの盛況ぶりでした。 発表の合間にある休憩時間には、コーヒーを片手にあちこちで参加者同士の活発な交流が見られました。

メインカンファレンス2日目の夜には、立食形式のGala receptionが開催され、世界中の参加者と交流を深めることができました。

おわりに

Botconfは、信頼できるコミュニティ内で最新の調査結果をTLPに基づき深く共有できる、世界でも数少ない貴重な場所だと改めて感じました。

次回(2026年)はフランスの北東部、Reims(ランス)で開催されるとのことです。

この記事を読んで少しでも興味を持たれた方は、ぜひ参加を検討してみてはいかがでしょうか。

*1:フランス西部の都市で、パリから高速鉄道で約1時間30分。住みたい街ランキング上位としても知られる

*2:FIRSTが標準化した機密情報共有のプロトコル。情報の機微性に応じて「RED(共有禁止)」「AMBER(組織内共有可)」などのレベルで区別し、機密情報の不用意な拡散を防ぐ仕組み

*3:攻撃者の管理するマルウェアやC&Cサーバなど

*4:政治的・社会的な意思表示や目的実現のために、ハッキングという手段を用いる活動家。"Hack"と"Activist"を組み合わせた造語