この記事は、 NTT docomo Business Advent Calendar 2025 21日目の記事です。
こんにちは。イノベーションセンター IOWN推進室の塚越です。
12/21を担当するのも今年で3年目になりました。
最近、自分自身がキャリアの一つの分岐点に立っている、という実感を持つようになりました。
役割や関わり方が少しずつ変わる中で、
「これまで自分が何に向き合い、何を大切にしてきたのかを、一度言葉にして整理したい」
「これまで実践してきたことや考え方に、どこかで共鳴してくれる人が現れたらいいな」
と思うようになり、この記事を書くことにしました。
この記事では、私自身の経験を振り返りながら、「デザイン」を軸に、異なる領域や立場をどのようにつなぎ、チームが前に進む状態をどのようにつくろうとしてきたのかを整理しました。 振り返るとこの4年間は、年ごとに向き合う障壁が変わり、その都度、関係者が同じものを見て前に進める「接続点」をつくる役割へと少しずつ転換してきた時間だったと思います。
○こんな人に読んでほしい
- 複数の興味やスキルをどう仕事に活かせばいいか迷っている人
- 職種を選ぼうとするほど、自分の可能性を狭めている気がして不安になる人
- デザイナーを専門性としているのに、「自分の強みは何か」が揺らいで迷っている人
- デザイナーとして働いているのに、成果の出し方や強みが言語化できず悩んでいる人
あくまで、一人の実践例にすぎませんが、キャリアや働き方を考える際のひとつの参考になれば幸いです。
- 私にとっての「デザイン」
- 0年目:ユーザーニーズに向き合う面白さに気づいた学生時代
- 1年目:手探りの実践の中で、デザインの可能性に触れた時期
- 2年目:「伝わらない」を分解し、伝わる形に組み直す
- 3年目:コンテンツを「使われる状態」にし、対話が前に進む土台を整える
- 4年目:協働しやすい環境を整え、チームの推進力に貢献する
- 4年間の延長線上で、今考えていること
- おわりに
私にとっての「デザイン」
私にとってのデザインは、分断された領域の間に橋をかけ、関係者が同じものを見て議論できる状態をつくる技術だと考えています。
研究と事業、専門家と非専門家、職種の異なるチームメンバー。関わる人が変われば、使う言葉も、前提知識も、抱えている課題も、目標も変わります。こうしたズレを放置すると、良い技術も良いアイデアも、社会に届く前に「伝わらない」「使われない」「意思決定が進まない」といった障壁にぶつかり、途中で止まってしまうことがあります。
なので私は、まず「どこで止まっているのか」を特定して、情報を整理し、翻訳し、共通理解をつくることに取り組んできました。必要な情報を集めて構造を整え、共通の言葉や図解に落とし込むことで、関係者が同じものを見ながら議論できる状態をつくる。
振り返ってみると、新規サービス創出、IOWN構想を伝えるためのコンテンツ制作、チームを率いる役割。
領域も立場も変わりましたが、やっていたことの本質は同じだと感じています。
「異なる立場の人が同じゴールに向かえるように、理解の土台を整える」
それが、私にとってのデザインです。
0年目:ユーザーニーズに向き合う面白さに気づいた学生時代
学生時代、当時専攻していた学問とは異なる分野である「プロダクトデザイン」や「事業創出」を学ぶ機会に恵まれました。そこで、ビジネスアイデアの可能性を広げる手段としての「デザイン」に強い関心を持つようになりました。
コロナ禍の影響で授業はフルリモートでしたが、コラボレーションツールを駆使しながら、ユーザーニーズの探索から仮説検証、商品デザインの制作、ビジネスモデルの設計まで、事業を立ち上げるための一連のプロセスを学び、Demo Dayまで駆け抜けました。
この経験を通じて、特に「ユーザーニーズの探索」や「仮説検証」のフェーズに大きなやりがいを感じるようになり、課題の本質を見極めながら価値を形にしていく仕事に魅力を感じ、デザインリサーチャーという職種を志すようになりました。
1年目:手探りの実践の中で、デザインの可能性に触れた時期
1年目は、デザインリサーチャーとして、他部門が検討していた新規ビジネスアイデアの創出を支援する業務に携わりました。
主な役割は、ユーザーリサーチを通じてターゲット像を具体化し、そのターゲットが抱えていそうなペインを整理すること、そして検討中のアイデアが、そのペインを本当に解決し得るのかを検証することでした。
とはいえ、入社してまだ半年ほどで、当時は提示された進め方や問いをなぞることで精一杯。重要性は理解していても、インタビューや検証を自分一人で設計し、状況に応じて使い分ける余裕はまだありませんでした。
それでも、技術を考える人、事業を考える人、そして実際にペインを抱えるユーザー。
立場や前提の異なる人たちの間に立ち、ユーザーの声を手がかりに議論を進めていくプロセスを通じて、「異なる職種や視点をつなぐ役割を果たせる」という可能性を実感し始めました。
振り返るとこの1年目は、一担当者として試行錯誤しながら、デザインが果たし得る「接続の役割」の輪郭に初めて触れた時期だったと思います。
2年目:「伝わらない」を分解し、伝わる形に組み直す
2年目の7月にIOWN推進室に異動し、IOWN構想の認知向上・案件化に向けたプロモーション戦略に関わるようになりました。
異動して最初に直面した壁は、IOWN構想の「全体像」をつかむことの難しさです。文献を読めば読むほど、どこか「わかった気がする」のに、いざ誰かに説明しようとすると言葉が出てこない。そんな状態がしばらく続きました。
原因は大きく2つあると感じました。ひとつは自身の知識不足。もうひとつは、アクセスしやすい文献や資料の認知負荷が高く、理解まで辿り着きにくいことです。専門用語や横文字の多用、冗長な文章に加えて、色調やレイアウトの一貫性がなく、ページごとに情報の優先順位が入れ替わって見え、読み手が迷いやすい。内容以前に、読み解くコストが高い状態でした。これは個人の問題に留まらず、プロモーション推進の障壁にもなっているのではないか、と危機感を持ちました。
そこで、お客様説明用スライド資料の改善から着手しました。既存資料を分析すると、技術(シーズ)に偏り、共感できるストーリーになっていないこと、理解の下地となる情報が不足していること、内容の取捨選択ができておらず70ページ規模になっていることなど、いくつもの障壁が見えてきました。さらにお客様への提案同行で、お客様や営業担当者の声を拾うと、「利用シーンを想起しにくい」という指摘があり、「自分ごと化」できない構造が課題だと整理できました。
改善では、内容の取捨選択やストーリーの組み直しに加えて、ビジュアル面も見直しました。色数を絞ってカラースキームを統一し、図表や強調のルールを決め、ページを跨いでも「同じ読み方」ができるように整えたことで、情報の見通しが立ちやすくなりました。
ただ、いざ改善を進めようとすると、私ひとりの知識と視点では限界がありました。そこで推進室のメンバーに協力を仰ぎ、チームで改善を進めることにしました。専門分野や経験の異なるメンバー同士で喧々諤々の議論も起こりましたが、その違いこそが理解を深める材料になると捉え、各メンバーの視点を行き来しながら「どこを重要視するか」「どういう順で伝えるか」を揃えていきました。
運用を始めてからは、資料請求が増え、説明がしやすくなり、社内外から「わかりやすい」と言われる機会も増えました。営業からの引き合いが増え、共創支援など関係性づくりにもつながったと感じています。何より、資料そのものだけでなく、資料をつくるプロセス自体が共通理解を生む「接続点」になったことが大きな学びでした。
実践の詳細は別記事「複雑な事業を解釈するためにチームで取り組んだこと」にまとめています。
3年目:コンテンツを「使われる状態」にし、対話が前に進む土台を整える
3年目は、コンテンツ制作を本格的に進めた一年でした。IOWNの価値を届けるうえで、コンテンツは「作って終わり」ではありません。
営業提案の現場で使われ、会話が前に進み、案件化につながって初めて意味が出る。私はこの一年、記事やユースケース動画、説明資料といった制作を進めるだけでなく、それらが「必要なときに、必要な人が迷わず使える」状態を整えることにも力を入れてきました。
当時、コンテンツ自体は少しずつ増えてきていた一方で、取りまとめておく場所や導線が整っておらず、「どこに何があるのか分からない」「情報が古いまま残っている」といった課題が見えてきました。結果として、営業担当からの問い合わせがメールで都度飛んできて、そのたびに個別対応する、という運用になってしまっていました。
この状態では、せっかく作ったコンテンツが現場で使われにくいだけでなく、私たち自身も、探す・答えるに時間を取られてしまい、次の打ち手を考える余力が削られていきます。
そこで、社内のポータルサイトを整備し、コンテンツを一箇所に集約して、「どんなシーンで使うのか」「何を見ればよいのか」が迷わず分かる形に整理しました。利用シーンや目的別の導線、検索しやすい言葉の付け方、更新ルールまで含めて設計し直すことで、「作ったコンテンツが、必要なときに、必要な人が迷わず使える」環境をつくることを目指しました。
同時に、チームとして考える土台づくりにも向き合いました。
当時のIOWN推進室は設立1年ほど。専門性も見ている景色も違うメンバーが集まり、議論がすれ違ったり、意思決定が遅れたりしやすい局面がありました。だからこそ「正しい答えを出す」以前に、違いを前提に対話できる状態が必要だと感じるようになりました。
そこで取り組んだのが、ワークショップを通じて「相互理解を深める」ことです。
詳細は別記事「チームの「混乱期」を乗りこなすために 〜「ウェルビーイング」の共有で深める相互理解〜」にまとめています。
要点だけ述べると、意見を一致させるのではなく、「なぜそう考えるのか」を理解し合うことで、ズレを「対立」ではなく「違い」として扱えるようになり、会話が前に進みやすくなりました。
この経験を通じて、コンテンツそのものだけでなく、コンテンツが使われる導線や、対話の場そのものを設計することも、デザインの力が発揮できる営みだと実感しました。
4年目:協働しやすい環境を整え、チームの推進力に貢献する
人数が増えるほど、見ている前提や判断基準が少しずつ違って、認識のズレや保留、障壁が「起きてから気づく」形で溜まっていきます。これは、これまでの3年間を一担当者として働く中でも何度も目にしてきたことでした。
だからこそこの一年は、誰かの頑張りで吸収するのではなく、チーム全員が安心して動ける土台を先に整えることに力を注ぎました。
- 進捗・論点・意思決定を可視化し、途中参加でも追える形に整理
- 定例は進捗の読み上げではなく、相談・判断・次の打ち手検討に集中
- 四半期の振り返りを「推進力を回復させる場」として設計
- 自由記入アンケートで、表に出にくい「もやもや」も拾い上げる
具体的には、進捗・論点・意思決定をNotionに記録し、毎回会議のアジェンダをSlackに先出しして「今日は何を確認・決定する回か」を揃える運用にしました。
加えて、当たり前のように毎週固定で開催していた定例もいったん見直し、まずは隔週開催に変更しました。というのも、目的が曖昧なまま「とりあえず集まる」回が続くと、毎週時間を確保しているのに判断が前に進まない。そんなもったいない会議が少しずつ積み上がっていたからです。さらに、論点が整理できていてテキストのやり取りで十分な場合は、思い切って定例自体をスキップするようにもしました。
すると、進捗報告だけで時間を使ってしまうことが減り、その場で一緒に状況を整え、判断し、次に進むための時間へと変わっていきました。メンバーからも「整理されていて助かる」「全体進行を共有してもらえて安心感がある」「会議体の品質が担保できていた」といった声があり、段取りを仕組みに落とすことで、相談と判断にきちんと時間を使える状態がつくれてきたと感じています。
また、定期的な振り返りはMiroで可視化し、「もやもや」も含めて言語化する場にしました。「振り返りは重要。もっと気軽に改善と前進を続けたい」「忖度なく言える状況でやりやすい」「建設的に議論できた」といった反応があり、協働の雰囲気が育ってきた手応えがありました。
もしこれをやっていなければ、問題が早期に共有されないまま進み、後半になって調整コストが膨らむ進め方になっていたかもしれません。
この一年を通じて目指したのは、「議論が前に進む」「困りごとが早めに表に出る」「助けを求めやすい」状態を保つことでした。情報共有手段、定例の使い方、振り返りの位置づけを整え、協働しやすいチーム環境を育てていった一年だったと思います。
4年間の延長線上で、今考えていること
この4年間を通して、私の中でひとつはっきりしたことがあります。
それは、ひとつの専門性に自分を当てはめるよりも、領域と領域のあいだに立ち、物事が前に進むための「接続点」をつくる働き方に、私は手応えを感じてきたということです。
正直に言えば、最初からこの形を目指していたわけではありませんでした。「デザイン」を専門として入社したのに、早い段階で専門とは違う領域に移り、不安や焦りを感じる場面も多くありました。
けれど、仕事の中で繰り返し立ち上がってくるのは、いつも似た状況でした。
技術や前提が違う人同士の間で会話が止まる。情報が散らばっていて意思決定が進まない。価値はあるはずなのに、伝え方や使われ方の壁で届かない。
私は、そうした課題を真っ先に見つけて、構造を整理し、言葉や図解に落として、みんなが同じものを見られる状態をつくることに、一番力を発揮できるのだと思います。
これからは、この強みを偶然の役回りとしてではなく、意図して磨いていきたいと考えています。
具体的には、複雑な技術を「誰にとっての価値か」から組み立て直し、意思決定を後押しする提案やストーリーの設計により深く関わっていくこと。そして、関係者が安心して議論できるように、情報や対話の場を整える「土台づくり」も、引き続き大事にしていきたいです。
おわりに
この4年間、扱うテーマも立場も変わりましたが、私が向き合ってきたのはずっと同じ問いでした。
「立場や前提が違う人たちが、同じ方向を向いて進める状態をどうつくるか」です。
仕事が難しく感じるときは、個人の力量よりも、前提・言葉・情報の配置が噛み合っていない構造が原因になっていることがあります。情報が散らばり、言葉の定義が揃わず、相手が何を求めているかが見えない。そんな小さな断絶が積み重なると、良い技術も良いアイデアも前に進みにくくなる。だからこそ、まずは「同じものを見られる状態」をつくることが、遠回りに見えて一番効く一手になるのだと、いまは思っています。
ここまでお読みいただきありがとうございました。それでは、明日の記事もお楽しみに!