Interop Tokyo 2023 〜​マルチベンダL5G x IoTサービス連携の取り組み〜

はじめに

こんにちは、イノベーションセンターの内藤です。NTTコミュニケーションズ株式会社 (以下、NTT Com) は、世界最大級のネットワーク展示会である 「Interop Tokyo 2023(会場:幕張メッセ、会期:2023年6月14日〜16日)」 において構築されるShowNet1に対しコントリビューターとしてローカル5G(以下、L5G)システムを提供し、実機運用することに成功しました。

昨年2に引き続き、今年はより高度なマルチベンダーでの5Gコア/RAN端末の相互接続やネットワークスライシングにチャレンジ。実験試験局の免許も取得して無線区間をOTA3とし、End-to-Endでアプリケーションのトラフィック流通を実現しました。

本記事ではその構成やスライシング手法、技術的なチャレンジについて解説します。

マルチベンダーによるEnd to Endスライシング

私たちは、ユーザーの要求に応じてネットワークやエッジコンピューティング環境といったリソースを柔軟に提供することを目標としています。 それを達成するには、ユーザーやアプリケーション単位での細かい粒度で品質の異なるNW経路を提供する、ネットワークスライシング技術が必要になります。

ネットワークスライシングの説明は昨年の記事が参考になります。今回は詳細記載を省略します。 NTT ComではShowNetにて、昨年に引き続きマルチベンダーによる基地局(gNB)から5Gコアの先のData Network (N6) を含めたEnd to Endスライシングの実現にチャレンジしました。 下図が構成となります。順番に解説していきます。

スライシングに関する昨年からのアップデートは以下3点です。

1.マルチベンダーでのスライシングにチャレンジ

Capgemini Engineering ViNGCは、Kubernetes/OpenShiftで動作する5GCであり、各Functionは1つ以上のPodとして構成されます。 C/U分離が可能であることから、UPFはKaloom UPFを使用します。Kaloom UPFはOpenShift上で動作するUPFであり、Edgecore Networks社のホワイトボックススイッチ上で動作します。 LeafとUPFからなる1つのクラスタで、複数の仮想UPFを動作させることが可能です。

ネットワークスライシングの手法は多数あり、昨年はS-NSSAIを用いた手法を実施しました。今回はマルチベンダーで相互接続をする観点から、インターオペラビリティの成熟度も探りつつ、仮想UPFを3台構成し、それぞれのN6に異なるDNN4を設定する方式を採用しました。DNNに紐ついたバックボーンネットワークは異なる品質設定がされており、UEではDNNを切り替えることで通過するネットワークの変更ができます。これをDNNスライスと定義しました。

2.5GCの設置場所としてMECを想定し、実サービスであるSDPF Edge5と連携

SDPF Edgeは任意のVM+アプリケーションをクラウド上の管理コンポーネントからZTPし、ユーザ拠点で起動できるサービスです。ViNGCの起動にはリソースが多く必要だったため、まだ商用ラインナップにはない高リソースMECをカスタマイズして作成し、Kubernetesを起動。5GCを構築しました。

3.自社開発のオーケストレーターであるQmonusを利用し設定自動化を実現

ViNGCに対して加入者データの投入やスライス作成/削除は、単体のAPI実行で完結するものではなく、複数のAPIを直列に、かつ5GC/UPF/バックボーン機器それぞれに対して操作が必要​となります。

NTT Com内製のマイクロサービス開発フレームワーク「Qmonus SDK」のトランザクション機能を用いて、システムを跨いだオーケストレーションスコープの一貫性を担保できます。トランザクションの状態と進行状況はフレームワークで管理されており、処理失敗時にはトランザクションの進捗状況に合わせて、各システムに対して最適な打ち消し処理を実行できます。 Qmonusを用いることでAPIによるデータ投入を実現しました。

なお、今回私たちはAWS Outposts ServerについてもShowNetにコントリビュートし、その上にNTTドコモの5GCを構築しました。この5GCについてもQmonusとの連携を実現しています。NTTドコモのコントリビューション部分については、NTTドコモのENGINEERING BLOG6をご覧ください。

実験試験局の運用

昨年のShowNetではUE – RU – CU/DUの無線区間はエミュレートしましたが、今年は免許申請を行い、電波を発波する実験試験局を運用しました。NTT Comには無線従事者免許を保有しているエンジニアが多数在籍しています。遵法し適切に電波を使用できるよう、輪番を組んで運用しました。

gNB装置は昨今登場した「RU/CU/DU一体型」を特徴とするものを採用。Airspan社のAirSpeed 1900を幕張メッセのhall6に設置しました。Interop準備期間中、遮蔽物が少なく、同時接続するUEの数も少ない好条件では期待以上の速度(DL790Mbps)が観測できたことも。

IoT Connect Gatewayとの接続

私たちはL5Gとその他サービスの組み合わせによる新しいユースケースの発掘にも日々挑戦しており、今回はN6に接続するサービスとしてIoT Connect Gateway(以下、ICGW)を選択しました。 ICGWは、IoTデバイスの通信をクラウド側でプロトコル変換(暗号化など)することでお客様の開発・運用コストを削減できるサービスです。

今回はCO2センサを会場に複数設置し、L5Gを介しICGWに接続。データの可視化を行いました。 ICGWはNTT Comが提供するSDP7サービスのひとつであり、今後も他のSDPサービスとL5Gとの連携を狙っていきます。

おわりに

この記事ではInterop Tokyo 2023(会場:幕張メッセ、会期:2023年6月14日〜16日)において構築されたShowNetについて、L5GのマルチベンダーによるEnd to Endスライシングなどを紹介をしました。今後は、今回のフィールドテストの成果を踏まえより多種多様なユースケースに対応できるネットワークスライシングの方式や、UE/RU/CU/DU/5GC/UPE構成のベストプラクティスとなる提供方法を探り、NTT Comのネットワークサービスへの応用について検討していきます。 なお、私たちのチームはインターン8も募集しています。一緒にL5Gの高度化に取り組んでくれる仲間を募集しています。 ぜひご検討ください。


  1. ShowNet: Interop Tokyoにおいて、様々な機器・サービスの相互接続性検証を実施するとともに、近未来のサービスアーキテクチャを実際に動かしている形で見ることができる世界最大規模のライブネットワークデモンストレーションです。Interop Tokyoへの出展社がインターネットへの接続性を利用して製品の動態展示のほか、来場者のインターネットへのアクセスとしても利用されるネットワーク。https://www.interop.jp/2023/shownet/
  2. 昨年: ShowNet2022でも我々はネットワークスライシングの取り組みを実施しました。 https://engineers.ntt.com/entry/2022/06/15/090043
  3. OTA: Over The Airの略。データの送受信を無線通信で行う技術をさします。
  4. DNN: Data Network Nameの略。5Gにおいて、UPFのN6以降のネットワークをさします。
  5. SDPF Edge: NTT Comが提供中のMEC(Multi-access Edge Computing)サービスです。 https://www.ntt.com/business/sdpf/service/edge.html
  6. ENGINEERING BLOG: https://nttdocomo-developers.jp/
  7. SDP: データ利活用に必要な機能をワンストップで提供するNTT Comのアーキテクチャです。https://www.ntt.com/business/sdpf/about.html
  8. インターン: 「先端研究開発(ネットワーク・デバイス)」分野の「ローカル5G無線(RAN), コア(5GC), トランスポートネットワーク(TN)の技術検証」が私のチームです。 https://information.nttdocomo-fresh.jp/event/on-site-internship/
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