この記事は NTTコミュニケーションズ Advent Calendar 2023 の5日目の記事です。
こんにちは、イノベーションセンター所属の岩瀬(@iwashi86)です。普段は生成AIチームのエンジニアリングマネジメントをしています。
この記事では「組織の遠心力」をテーマに組織を強くする方法について書いていきます。本記事を読むことで、組織改善策の一案が得られることを狙っています。
なお、本記事は一人のエンジニアリングマネージャーである @iwashi86 の主観を多く含みます。NTT Com内には多くの考え方があり、その1つとして受け取っていただければ幸いです。
組織の遠心力って何だろう?
同じ組織の @mizuman_ が社内講演した「最強のチームが最高のプロダクトを作る」というスライドがあります。
詳細は上記スライドをぜひご覧いただければと思いますが、チームが良ければ良いほど、プロダクト(やソリューション)の成功率が高まります。最強のチームを作るために、優秀なメンバーがチームに残り続けてくれる必要があります。(チームからメンバーが抜け続けていては、コミュニケーションの文脈が失われ続けるため、効果的に働くことが難しくなるため)
一方で厄介なことに組織には遠心力が働きます。遠心力とはその名の通りで、中心から外側に向けて遠ざかる力です。中心が会社そのものだとすると、個人が外側(つまり会社の外)に引っ張られる力を本記事では、「組織の遠心力」と呼んでいます。この遠心力が一定の(個人ごとに異なる)閾値を超えると、メンバーの離職につながります。
この遠心力はさまざまなレイヤーで存在します。すなわち、会社全体・組織(たとえば、部や部門)・チームといったレイヤーです。それぞれのレイヤーで異なる遠心力が働きます。例えば、チーム自体には愛着があるが、会社全体に対してはあまりエンゲージメントを感じない、といったようにレイヤーによって力の強さが異なります。
この各レイヤーの遠心力が大きくなりすぎると良くない結果(たとえばメンバーの離職など)につながります。さて、よくない結果を止めるためにはどうしたらいいのでしょうか?
私たちも究極な絶対解を持っている訳ではありません。ですが少なくとも、私たちの会社(NTTコミュニケーションズ)、組織(イノベーションセンター)ではこうしています、という取り組みがあります。以降では、遠心力の発生事由を考察した後に、遠心力を抑える取り組みについて紹介します。
なぜ、遠心力が生まれるのだろう?
遠心力が生まれる原因は、企業や組織によって大きく異なります。ここでは、典型的・ありがちな例を組織から見た内部要因と外部要因の2つに分けて紹介します。(NTT Comの例というよりは、一般論です)
まず、組織の内部要因で言えば、次のような例があります。
- 組織のゴールがよくわからない
- そもそも、ゴールを理解するためのコミュニケーションが存在しない
- 入社前はフルリモートと聞いていたが、方針変更で出社強制となった
次に組織の外部要因で言えば、次のような例があります。
- 仕事以外のプライベートで、勤務可能環境が変わった
- SNSで見る情報から隣の芝生が青い(他社の環境が素晴らしく見える)
- ある個人の興味分野が全く異なったものに変わった
状況のように遠心力は内部要因と外部要因でさまざまな理由から生まれます。
内部要因・外部要因へのアプローチのスタンス
では、遠心力を抑えるためにはどちらの要因にアプローチすれば良いのでしょうか?
結論から言えば、外部要因ではなく内部要因に集中してアプローチします。なぜ外部要因に対するアプローチはうまくいかないのか一例を挙げてみましょう。
外部的な要因は組織外にあるため、組織からは原則アンコントローラブルな領域です。無理やりコントロールしようとしても結果的にうまくいきません。
たとえば、アンチパターンの1つではありますが、仮に「隣の芝生の青さを見せないために、外部の勉強会に参加禁止」みたいなルールを設けたとしましょう。このルールが適用されると、外部勉強会の参加に価値を置いているメンバーのエンゲージメントがだだ下がりになります。勉強会の情報は、ソーシャルメディアで簡単に入手可能ですし、各種サービスのレコメンドアルゴリズムに自然と情報に触れてしまうことも多いでしょう。ルールで縛ったとしても、意味がないどころか悪影響なのです。
(補足:NTT Comは積極的に外に出ようというカルチャーがあります。特に、私の所属するイノベーションセンターには「枠を超えよう」という組織バリューがあり、社内外問わず、どんどん外に出るのが是というスタンスです)
内部要因へのアプローチ
外部要因へのアプローチの難しさがわかったので、内部要因へアプローチしていくことになります。以下で、企業・組織・チームのレイヤーごとのアプローチの具体事例を紹介していきます。
企業レイヤーでのアプローチ
企業全体のアプローチの一例としては、幹部と社員の対話会があります。NTT Comでも例に漏れず、 KURUMAZA.exe という幹部対話会を開催しています(リンク資料 P5~6参照)。幹部と直接対話することで、疑問に思っていた内容を解消できるので、自分の業務に納得感を得やすくなります。
なお、このKURUMAZA.exeは現在、リモート開催がメインですが、当初は車座になって幹部と話し合うという場をオフラインで作っていました。KURUMAZA で EXEcutive(幹部) と話し合うことから、KURUMAZA.exe というネーミングだったわけです。
すでに3年以上開催しており、このイベントの開催方法については @Mahito が別記事で説明しておりますので、ご興味あればぜひご覧ください。
組織レイヤーでのアプローチ
私の所属するイノベーションセンターでは、組織内のメンバーであれば誰でも参加できるIC酒場というものを開催しています。
元々はこの前身には、「ICカタリバ」というオンライン座談会がありました。新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴って、対面のイベントを開催できることになったので、試しにお酒もあり(飲まなくてもかまいません)な場を作ってはどうか、という案で始まったものです。終業後の時間帯から、任意で人が集まってワイワイしてチームの壁を越えてネットワークが形成されています。組織に所属する人を知り、話すことで組織への帰属感を高まります。(=遠心力の軽減につながります。)
その他、業務面での戦略的なアプローチとしては、部門やプロジェクト横断でチームやプロジェクトを組成するというアプローチがあります。新しい人やチームに働きかけにいくというのは、どちらかというとハードルが高いと感じる人が多い印象です。何らかの理由があって話す機会があれば話せるのですが、そもそも理由がない状態から突撃するのは、一定の難易度があります。だから、業務である程度の強制力を持たせて、それを理由として使ってもらいます。すると意図的に組織の人的ネットワークを構築できるわけです。(マネージャー陣の腕の見せどころかもしれません)
チームレイヤーでのアプローチ
チームレベルで言えば、チームビルディングのアプローチがあります。チームビルディングに関しては、NTT Comで実際に使っているノウハウをまとめたチームビルディングハンドブック を公開しておりますので、詳細な方法はそちらをご確認ください。
その他、チーム単位でふりかえり(アジャイル開発でいうレトロスペクティブ)を実践する方法も有効です。ふりかえりの過程で自然と対話が生まれます。その対話を通じて、チームメンバー同士の相互理解が進み、チームの結束力が高まります。(=遠心力の軽減につながります。)
双方向と一方向のハイブリッド
ここまで事例を含め、アプローチをいくつか紹介してきました。それら全てに共通するのは「双方向の対話」です。実際に双方向で話し合う機会を作ることで、遠心力を軽減できます。
もちろん対話以外にも、ドキュメントを使って考えを発信するような一方向のコミュニケーションもあります。発信が増えることで、組織内の情報の透明性が高まります。その結果、各メンバーの業務の背景理解につながり、業務の納得感の醸成につながるわけです。
したがって、組織の状態に応じてどちらも利用することで高い効果が得られます。
おわりに
本記事では組織の遠心力・その発生理由・私たちの組織で取り組む対応策についてご紹介しました。1つでも使ってみたいと思うネタが見つかれば幸いです。
それでは、明日の記事もお楽しみに!