目的を選ぶだけでクラウドアーキテクチャを作ることができるユーザ体験を目指して

この記事は、 NTT Communications Advent Calendar 2023 10日目の記事です。 そして、DevOpsプラットフォームの取り組みを紹介する9回目の記事です。Qmonus Value Streamについては、当プロダクトの連載記事をご覧ください。

はじめに

こんにちは、イノベーションセンターのQmonus Value Stream チームに所属している松本です。 私たちQmonus Value Stream チームのミッションはNTTコミュニケーションズおよびNTTグループ向けDevOpsプラットフォームであるQmonus Value Streamを開発してプロダクトチームに提供し、プロダクトチームを課題解決に集中させることでプロダクトの成功に寄与することです。 本記事は、そんなDevOpsプラットフォーム Qmonus Value Streamを使ってユーザに体験してほしい「目的を選ぶだけで作るクラウドアーキテクチャ」を実現するための取り組みを紹介します。 また、今回、Qmonus Value Streamを無料でお使いいただける機会を作りましたので、詳しくは記事の最後をご覧ください。

プロダクトとして開発される内部向けプラットフォーム

私たちのチームが提供するQmonus Value Streamはプロダクトと位置付けられて開発されています。そのためチームにはプロダクトマネージャー(以下、PdM)が配置され、PdMは開発者と共に開発を進めています。私たちのPdMはQmonus Value Streamの開発から提供までの戦略を立て、実行、意思決定する責任者です。 私も以前は内部向けプラットフォームを提供するチームに所属していましたが、内部向けプラットフォームはコスト削減やポリシーの適用を主な目的としていることから利用を強制されることも多く、厳しいルールや機能不足から利用者には窮屈で不便なものだと認識されることもありました。Qmonus Value Streamはこのような過去の内部向けプラットフォームとは目的が違い、Developer Experienceを改善するものです。Qmonus Value Streamは社内規定で強制するものではなく、PdMがプロダクトチームに成功ストーリーを伝え、プロダクトチームが試して自ら採用を決定する方法で利用を促進しています。ここでいうプロダクトチームは社内やグループ内で特定プロダクトを成功させるために組織された、PdM・開発者・デザイナー等のチームです。

ユーザ体験を追求する取り組み

私たちのチームでは開発者もPdMと同様にユーザ中心思考でユーザ体験の追求に取り組んでいます。今回はペルソナの作成とユーザテストについてご紹介します。

ペルソナの作成

プロダクトとして内部プラットフォームを作る際にも他のプロダクト開発と同様にユーザの理解は大事になります。 私たちのチームは、ISPで働いてたメンバー、情シスで働いてたメンバー、新規事業の開発をしていたメンバーなどさまざまなバックグラウンドを持ったメンバーで構成されています。メンバーは「内製開発チームのテックリード」といっても想像できなかったり、若手のリーダーを想像したり、ベテランのマネージャ級の人物を想像することもありました。

私たちのチームは共通のユーザ像を描きたかったのでPdMのメンバーが集まってペルソナを作ることにしました。まずは、社内の16チームのテックリードにインタビューして、テックリードたちがどのような課題に取り組んでいるか、その課題の解決にどのような苦労があるかを聞き出すことができました。そしてインタビュー記録を読み、それぞれのペルソナを書き出し認識を合わせる作業をしてペルソナを書き上げています。 今まで他人が作ったペルソナを見ることはありましたが、本当にこのようなペルソナは存在するのかと懐疑的なところもありました。この取り組みでは、ペルソナを作るプロセスで実在するプロダクトチームにインタビューをしてユーザは何処に関心ごとがあるかを確認しましたので裏付けがあり納得感のあるものができたと思います。

複数のペルソナを作成したのですが、例としてその1つをご覧ください。大手企業のDX推進担当が開発効率・品質向上という課題に取り組んでいるが、本来やるべき仕事に力を入れられず、さらに自己研鑽する時間の捻出に苦労している様子が分かります。開発者にもペルソナを共有することで、今後は問題解決の手法を議論するときにもペルソナだったらどう感じるだろうという視点も加わることを期待しています。

ユーザテスト

今年になってチームはユーザテストのプラクティスを取り入れました。ユーザテストのやり方はgoodpatchさんの記事を参考にさせてもらっています。

私たちのプロダクトではゴールを定めて開発し、ゴールに達成したらユーザテストをしてその効果を確認します。 おおよそ3名から5名に社内から協力いただき、ユーザとして目的を達成するような操作をしてもらいます。ユーザには操作しながら考えていることを発話するようにお願いするので、私たちは操作する画面と表情と考えてることを観察し、受け入れられているのか、つまずいたり迷ったりしていないかを読み取っていきます。観察した結果やインタビュー結果を持ち寄りインパクト分析して次のアクションを導き出しています。次のゴールを設定しゴールを達成したら評価するというフィードバックループを繰り返しているのです。

私たちのチームでは、ユーザテストを開発者が担当しました。これまでの開発チームは直接ユーザの声を聞く機会がなく、ユーザがどのように利用しているか想像できないという課題がありましたが、ユーザテスト後に開発者へヒアリングしてみるとユーザテストは概ね好評で「チームだけでは気付けないことが得られた」「プロダクト開発には必要なことだと考えている」との意見がでています。

ユーザテストを始めた初期のインパクト分析の結果をご紹介します。検出された項目は、影響の大きさで効果問題・効率問題・満足度問題に分類されます。効果問題はユーザが操作を続けられないほどの大きな影響であることを示しています。さらに何人からその問題を検出したかで分類し、3人全員のユーザから検出されたということは、おそらくほとんどのユーザが困難に直面することになる事態を推定できます。このインパクト分析で赤くぬった箇所、黄色く塗った箇所の順に優先順位が高いと分かりますので、最も効果の高い部分から問題を修正できました。

「目的を選ぶだけ」というユーザ体験

私たちのチームはプロダクトチームのテックリードは本来優先して時間を使うべきビジネスロジックの設計や実装に時間を使うべきなのに、直接の顧客価値を生まないクラウドアーキテクチャの構築やCI/CDパイプラインにも多くの時間を使っていることに着目しました。マニュアルを読んで調べたり定義ファイルや設定ファイルを作成したり試行錯誤しなくても良いように、「目的を選ぶだけで」クラウドアーキテクチャが作成でき、その Infrastructure as Code(以下、IaC)を組み込んだCI/CDパイプラインを作成できるという体験をさせたいと考えました。 今回、ペルソナの作成やユーザテストを取り入れフィードバックループを回すことで得られた成果として、「目的を選ぶだけで」というユーザ体験を「主目的」と「オプション」を選択するUIを作成できましたのでご紹介します。

まず、主目的の選択イメージを示します。当初は3層アーキテクチャを選択する画面だったのですが、現在のバージョンでは「スタンダードなWebアプリケーション」を選択するように変わりました。これなら、3層アーキテクチャを知らない人であっても、構築するシステムの目的が分かっている人であれば利用できます。ドキュメントを読む必要も設定ファイルや定義ファイルを書く必要がないだけでなく、他のメンバーやテックリードに力を借りることもなくクラウドアーキテクチャが構築できるようになりました。

次に、オプションの選択イメージを示します。ユーザのアプリケーションには事業特有の要件があったり、組織によって共通で求められるセキュリティポリシー要件が定められていることもあります。この画面ではシステムの冗長化とアプリケーションの脆弱性試験のオプションが選択されています。冗長化の設定はミスに気づきにくい課題がありますし、アプリケーションのパッケージの脆弱性試験もツールの検証から始める必要があり導入は困難ですが、私たちのDevOpsプラットフォームを使えば画面で選択するだけで構築できます。これからも多様なアプリケーションで利用できるようにオプションを拡充していきます。

まだまだ改善は続く

「目的を選ぶだけ」のユーザ体験を作ってからも複数名にユーザテストをしたところ、概ね好意的な反応を得られたのですが、アプリケーションによってはまだ十分な拡張性を得られてなかったりエラー表示時に自力で解決できない場合があったりと、多くの気づきを得ることができました。私たちはまだフィードバックループを繰り返す必要がありそうです。

Qmonus Value Streamの実証実験へのお誘い

この「目的を選ぶだけ」でクラウドアーキテクチャを作る体験を、NTTグループだけでなく一般のお客さまにも試してもらいたいと考えています。 そこで、DevOpsプラットフォームの商用化を目標として機能や操作性の課題について利用者からのフィードバックを目的とした実証実験を行います。トライアル利用をご希望される方は以下の応募フォームからお申し込みください。

  1. 応募開始日:2023年12月10日 1
  2. トライアル利用可能期間:2024年2月1日 - 2024年9月30日 2,3
  3. 対象チーム
    • 日本の企業であること
    • 開発チームは内製で開発していること
    • 開発チームはアジャイルに開発していること
    • 開発チームにCI/CDやIaCに理解があること
    • 開発で利用するサービスの導入に関する決定権を持っていること、もしくは決定権者に対して導入の提案ができること
  4. 応募フォーム:こちらからお申し込みください。数日中にこちらから折り返しご連絡させていただきます。
  5. 利用料:無償
  6. その他:本実証実験でのトライアル提供における導入から運用まで、無償でNTT Communicationsがサポートします。

最後まで、ご覧頂きありがとうございました! それでは、明日の記事もお楽しみに!


  1. 応募者多数の場合、本DevOpsプラットフォームの提供をお待ちいただく、もしくはお断りする場合があります。
  2. トライアル利用は1ヶ月間ですが、トライアル利用期間中であれば1ヶ月単位で延伸できます。
  3. NTT Com都合でトライアルを中止もしくはトライアル期間を短縮や延伸する場合があります。
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