RetailTech × API。Enterprise APIs Hack-Night #5レポート

6月23日(木)にEnterprise APIs Hack-Night #5が開催されました。前回からxTechを全体のテーマとしており、今回はRetailTech × APIとなっています。こちらの記事は各登壇者の内容レポートです。

モノのハブステーション「minikura API」

登壇者:寺田倉庫 システムグループ藏森安治さん

寺田倉庫は1950年創業の企業で、Webサービスは5年前、Web APIは2年前から出しています。

minikuraを簡単に説明すると、Webで申し込みできるトランクルームになります。通常のトランクルームは契約はもちろん、利用も面倒です。さらに借りた後も車に積めたり、鍵を開けたりするのが面倒でした。mikuraはWebで申し込みもできて、荷物を送るのも簡単にできます。送られてきた物は検品し、一点一点データベース登録します。

そして、minikura APIはminikuraの全機能が使えます。ものを入れる、入れたものを見る、入っているものを出すの3種類の機能がベースとなっています。開発はまずAPIから行うようになっており、現時点で150本を超えるAPIを提供しています。バイマのリセール、エアークローゼット、サマリーのサマリーポケットなどといったサービスのバックヤードも提供しています。

minikura APIのここだけの話

エンタープライズ企業におけるAPI化の方法

API提供によって、語るべき人に語ってもらえるようになりました。私たちは消費者と距離がありますが、各サービス事業者がサービス利用者に分かりやすい形でサービスを紹介してもらえています。その結果、これまでにない商品を預かるようにもなっています。

私たちはすでに確立したワークフローがあり、それを変更するのはとても大変でした。そこでまず会員登録だけAPI化し、徐々に広げていったのが今の形です。エンタープライズ企業におけるAPI化を担うのは開発者であると言え、その意味では開発者は失敗を恐れずやっていって欲しいと思っています。

サンドボックスが大事

minikura APIを叩くと倉庫や人が動くことになります。ちょっとした試用が業務に混乱をもたらしかねません。その意味ではサンドボックス環境がとても大事で、B2Bにおいては特にサンドボックス環境がないとトラブルになりかねません。

寝た子は起こすな

私たちは「預かるにイノベーションを」起こしたいと考えています。そんな中、私たちの業界では「寝た子は起こすな」という言葉があります。倉庫に置きっ放しになっている(塩漬け状態)になっている顧客に案内メールを出して出庫されたらたまらない、という訳です。

しかしイノベーションを起こすためには預けた上で、さらに変化をもたらしたいのです。例えば次のような妄想を考えてみました。預けた後に、倉庫内で物々交換するマーケットです。倉庫内移動なのでお互いの名前も住所も知る必要がありません。さらにわらしべ長者よろしく、交換している内に自分にとって不要だったものがとても役立つものに変わるかも知れません。

私たちはそんな形で外部からのエネルギーを取り込んで新規事業を開拓しています。本社の倉庫はまだまだICT化が進んでいません。もっとBizDevを加速していきます。

Q&A

競合他社の動き(API化について)はありますか?

minikuraについては競合がいません。競合は実家と言っています。

API化によって誤発注などに対する対策は?

大量発注はあります。API側の開発はどんどん進んでいくのですが、現場(倉庫)はまだまだICT化が進んでいないのでそのギャップが大きいと感じています。

当日の動画

物流のクラウド化

登壇者:エアークローゼット CTO 辻亮佑さん

エアークローゼットは感動するファッションの出会いを生み出したいというコンセプトのサービスです。コーディネーターが組み合わせた洋服を期限なく借りられます。そのまま購入もできますし、返却も可能です。その際、クリーニングはいりません。

サービスを作るにあたってやらなければならないことが多数ありました。

  • 洋服の入庫およびササゲ(採寸、撮影、原稿)
  • 1品1品を単品管理
  • 選ばれた服をユーザに配送
  • こだわりの検品、クリーニング

これらをすべてまるっと依頼できるのが寺田倉庫さんでした。minikuraなくしてエアークローゼットは存在しなかったとさえ言えます。洋服というリアルのものが絡む分、インターネットだけでは解決しませんし、かといってスタートアップだけでは人も足りません。

そこでminikuraの撮影付きお預かりサービスがありました。在庫の単品管理も可能で、クリーニングもできます。倉庫から指定した住所への発送も可能です。システム連携するAPIも用意されており、出会ったときには感動すら覚えました。

具体的な活用事例について紹介します。

アイテム情報連携

アイテムの指定の日付からの差分情報が取得できます。

  • 新規入庫アイテムの取得
  • どのアイテムが今どこにあるのか取得
  • メタ情報の連携

などの情報が取得できます。

配送伝票番号取得API

配送依頼をかけたアイテムごとに、ヤマトの配送伝票番号を取得できます。レンタル出庫したユーザへ届くアイテムの配送伝票番号を送付しています。ユーザは自分でコンビニ受け取りに変更したりできます。

レンタル出庫依頼

指定したアイテムを指定したユーザへ送付します。現物確認用にオフィスへ送付するのにも使います。

アイテム情報更新

ユーザのフィードバックをもとにアイテム情報を更新します。

総括

今は実現したいことを元に、寺田倉庫さんと相互連携しながら業務オペレーションやシステムも継続的に改善しています。例えば検品APIは元々ありませんでしたが、一緒に考えて作っていきました。minikuraのサービスを使うことで、物流面の運用はすべて任せられるのでとても役立っています。

Q&A

社内DBは何を管理していますか?

フィードバックやスタイリストに関係するデータは社内DBで管理しています。

もしもminikuraがなかったら?

このサービスはなかったでしょう。企画段階から色々な倉庫にあたっている中でminikuraに出会いました。

競合の出現については?

ファッションレンタルで言うとすでにライバルは出てきていますが、コンセプトが違うので大丈夫と考えています。

エアークローゼットとminikuraの間で情報整合性については?

過去に何度か起こったことがあります。違うアイテムと入れ替わっていたなど。その度にフローを変えて、防止策に取り組んできました。

出庫取消は?

あります。基本的に出庫取消は電話です。また、作業量の増減もあるので、デイリーで共有しています。APIにない機能は企業間コミュニケーションで解決している。

シーズンによってスケールは?

シーズンはトレンドに影響しても出庫量についてはあまり変わらない印象です。シーズンによって冬服は奥に移動するなど、オペレーション上の工夫はしています。

リクエストした機能はありますか?

たくさんあります。例えば返送用伝票に倉庫管理番号が入っているのですが、返送用伝票がなくなるとワークフローが混乱しました。しかし、元々APIがありませんでしたので、追加してもらっています。

当日の動画

iPadクラウドPOSレジにおけるAPI活用事例

登壇者:株式会社ユビレジ 取締役 竹内歩夢さん

ユビレジは2010年からはじまったiPad POSアプリの元祖です。約2万店舗に使ってもらっています。基本的なPOS操作はiPad、解析系はWebブラウザで使います。アルバイトでも学習コスト少なく使えるのがポイントです。

技術面の話

ユビレジでは3種類のAPIを提供しています。

Web(HTTP)API

いわゆるREST APIです。差分を取得するのに特化したエンドポイントを用意しています。商品登録や会計の取得などもできます。ユビレジ自体このAPIで実現しています。

iOS URL Scheme API

iOSのアプリ間連携を実現している。ユビレジから他のアプリ(決済系など)を呼び出して戻ってくる使われ方です。iOS9から条件が厳しくなってSchemeの事前の登録が必要になっています。

iOS HTTP API

iPadアプリ内にHTTPサーバが立っていて、APIを提供しています。LAN内で使われています。iOS 10で制限がかかるかも知れません。

認証方法

API Token

アカウントごとにAPI認証用のTokenを幾つでも発行できます。実装が簡単で、自社システム向きです。

OAuth2

サービス提供者向けです。認証、認可のフローを自動的に行えます。APIアクセス許可、拒否をエンドユーザの負担なく行えるのが利点です。アクセストークンは1日、リフレッシュトークンも2週間程度となっていて、頻繁にアクセスしないと無効になるようにしています。

ユビレジAPIは元々私が自分で経営していた会社で最初に使ったと思います。その後、ラクーン、Salesforce、トレタ、PayPal、GMO、freeeなどでも使われています。開発者向けのサンドボックスも用意しています。

APIと関連業務について

オーダー管理

オーダーアプリで取った注文をiPadアプリへ受け渡してお会計します。同一端末ならURL Schemeで、別端末ならiOS HTTP APIで行います。

決済

食べログPay、楽天Pay、PayPal Here(現在終了)などの決済アプリとの連携します。それぞれの決済アプリが持っているAPIを叩く仕組みです。

生産・仕入・在庫管理

在庫管理や棚卸しを実現します。ラクーンのスーパーデリバリーで使われています。ユビレジの商品マスタをAPIで更新する仕組みです。賞味期限の早い商品は午前中の売れ行きを見て、午後の生産調整を行うといった使い方もされています。

販売管理・顧客管理

顧客情報の登録をAPIでできます。レセコン連携、売り掛けの管理、DM発送もできるようになっています。

会計

支払い方法別の金額取得がAPIで可能です。クラウドの会計サービスと連動するのに売り上げ情報を渡しています。大型で古いERPに対してmac miniを経由してデータ連係しているケースもあります。

Q&A

導入店舗はどういった業種が多いですか?ハードルはどうですか?

飲食店がメインです(7割)。残り2割が雑貨、アパレル。残り1割が美容院、整骨院など。新規店舗だと初回の導入コストに比べると低いので問題になりまん。チェーン店はすでに設備があるので難しいことが多いです。故障など、タイミングが必要です。

アプリによってはAndroidのものもあるが、他のOSとの連携は?

データの連係だけすれば良いのでHTTP連携も使えます。

店舗側での商品/在庫管理する上で商品IDの管理は?

バーコードをキーにユビレジにも登録しているのだと思います。

企業連携する際、どれくらい期間がかかっているのか?新しく開発しているケースはあるのか?

アプリ間の決済連携は簡単で2ヶ月くらいです。会計系はテストの工程が必要で、半年くらいかかってしまいます。新機能については話を何回か聞いています。お互いのメリットを見て判断しています。

SquareやPayPalなどもPOSを提供したりしていますがいかがでしょうか。今後決済についても提供する可能性があるでしょうか?

Squareは決済ありきでPOSはおまけ。PayPal Hereも。ユビレジはPOSありき、決済は逆におまけとしています。私たちはお互いいいとこ取りして一つの大きな仕組みとしています。

当日の動画


今回は懇親会が別会場でしたが大いに盛り上がっていました。次回は8月25日にEdTechを予定しています。ぜひご参加ください!

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