マーケティング×テクノロジー!「Enterprise APIs Hack-Night #7」レポート

10月13日にEnterprise APIs Hack-Night #7が開催されました。今回はMarTech(マーケティング×テクノロジー)をテーマに行われました。マーケティング分野はテクノロジーの発展がめざましく、マーケティングオートメーションなどのキーワードにも注目が集まっています。 この記事では各登壇内容について紹介します。

APIでつながるマーケティングの実現

株式会社シャノン 技術統括本部 取締役 堀 譲治 さま 資料はこちら

シャノンではマーケティングプラットフォーム、マーケティングオートメーションツールを開発しています。システムのコンセプトとして、マーケティングに必要なものを一切提供します。メール配信、セミナー管理、テレマーケティング、ダイレクトメールなどなど。マーケティングオートメーションが最近ホットで、海外からも色々入ってきています。シャノンではオフラインでの名刺情報管理やセミナー、イベント管理などの機能が実装されているのが特徴です。オフライン、オンラインの両方をサポートしています。 そして我々のシステムではAPIが提供されています。

なぜAPIを開発したのか?

2009年(製品をリリースして3年目)がAPI提供の最初の年になります。増え続ける要望に対して開発リソースが足りていませんでした。それらの開発を外部開発パートナーにお願いしたいとは思いつつも、顧客ごとにコードを変えてカスタマイズするのは長期的に見た時に難しいと考えました。そこでAPIを開発することを決めた次第です。 つまり必要に迫られてAPI開発をスタートしたというのが本音です。

APIがあることのメーカーとしてのメリット

APIによってユーザがベンダーロックインを回避できるようになりました。APIがなかったら、製品を買ったら最後、交換ができません。また、APIがあることで追加開発ができるようになりました。APIによる先進性のイメージもメリットです。今は薄れていますが、当時ベンチャーで最初からAPIを提供しているケースは多くありませんでした。 そしてソリューションの大規模化が挙げられます。APIがあることでCRMやCSRとの連携など、マーケティング全体を考えた提案、営業ができるようになりました。最初は物売りでしたが、APIによってソリューション系ベンダーになったと言えます。それに応じて開発パートナーなども増えてきました。 さらに自社の中でマイクロサービス化が可能になりました。自社の中でもAPIを使うことで、一つのサービスが小さなサービスの集合体として作れるようになりました。

APIの種類

現在2種類のAPIを提供しています。バックエンド用APIはXMLで、認証があります。主にサーバ間連携に使われています。もう一つはフロントエンド用で、対象はJavaScriptとなっています。こちらは認証不要でハイパフォーマンスなものです。フォーマットはJSONを使っています。

API提供者としての苦労

大きな問題としてはリソース制限があります。現状ではハードな制限ではなく紳士協定でやっています。その上でサーバリソースを見ながら調整したり、アラートが出たらクライアントに連絡して調整してもらいます。APIインタフェースの変更は基本的に行いませんが、実際の利用状況を見ながら変更したり廃止も行っています。APIのバージョニングは今のところ行っていません。 APIを公開しただけでは使ってもらえません。そのための布教活動も必要です。事例も必要なので、まず数社に狭く深く使ってもらう必要があります。さらに自社でも積極的に使って、問題があればAPIを変更して使い勝手を高めています。

APIの活用事例

今回は以下の事例を紹介します。 - 名刺アプリ - 独自の管理画面構築
権限によって変えたり、大規模イベントの時に利用することが多いです。 - 展示会での一括資料請求フォーム
一社ごとではなくチェックボックスでまとめてできます。

今後

マーケティングにおける統合管理が重要になってきます。例えばWebは頑張っているんだけど、セミナーや電話、代理店は半端…といったことはよくあります。WebはKPIがとりやすいですが、他の施策は人力なところもあり、なかなか管理しきれていません。 2011年時点でマーケティングベンダーは150社くらいでしたが、2016年では3,500にものぼっています。マーケティングオートメーションだけで100社以上あります。今後も増えていくかも知れません。それはなぜかというと、マーケティングの施策が増えているからです。昔はテレビ、新聞とかだけだったのが、今は膨大に増えています。それらを正しく判断して予算配分するのはとても難しいのが実情で、マーケティングオートメーションの活かせる道だと考えています。

API利用開発のTIPSご紹介

株式会社アクティブ・ワーク Cross Device Solution Assistant Leader 吉田 晴樹 さま

SMP APIを利用した開発事例紹介

生命保険会社のバースデーメール開発を紹介します。生命保険会社の顧客の赤ちゃんに対してメールを送るというものです。元々同じ仕組みはありましたが、普通にメールを送るだけで味気ないものでした。そこでFacebookコネクトを通じてスライドショーを表示するようにしました。 これはAPIを使っているので、顧客のメールアドレスを持たずにサービスが提供できるというものです。

WebフレームワークとAPI

ここからは開発者の視点でお話していきます。 SPA(シングルページアプリケーション)ではない、従来のWebシステムの場合は一覧、詳細画面と一回一回通信を行います。対してSPAは一回にすべて取得して表示は隠しておきます。そして必要に応じて表示を切り替えます。主なフレームワークとしてはAngularJSやReactがあります。 SPAではフロントエンド側でデータやビジネスロジックを殆ど持たせられません。そのため非同期でサーバと通信を行ってデータ取得を行います。つまりAPI利用が前提になっています。そして、その際にはREST APIを使って開発することが増えています。 例えばAngularJSの$resourceライブラリはREST APIが使いやすくなるライブラリです。これを使うことでAPIを扱う部分のコード量が数分の一になってしまいます。

開発者を支えるMcokAPI

さらに必要なのがMockAPIです。API提供元でもサンドボックスを用意してくれていますが、あまり勝手に叩くわけにもいきません。さらにAPIがまだない場合もあります。他にもエラーパターンを色々試したい、実行速度を落としてAPIを試したい時もあります。こういうときに便利なのがMockAPIです。 MockAPIとはAPIのように動くサービスで、ダミーのレスポンスを簡単に得られるようになります。例えばeasymock、stubby4nodeなどがあります。stubby4nodeは機能がリッチですが、設定がちょっと面倒です。 他にもAmazon API Gatewayを使う手もあります。画面から簡単にAPIを定義できて、モック用のAPIを作るのに使えます。

Q. Angularを採用した理由

スマートフォン用にリッチなUIで見せたいと言った時に使えます。

Q. お客さんからAPIを使って作りたいと言った要望が来ますか?

APIを持っている会社さんから要望が来ることが多いです。

APIを利用したMautic(マーケティング・オートメーションツール)と他システムとの連携について

ANNAI株式会社 Principal Software Engineer 青山 義万 さま 資料はこちら

Mauticは世界初のオープンソースのMA(マーケティングオートメーション)ソフトウェアになります。日本語を含む52言語に対応しています。8万以上の企業で導入されており、1日250社くらい導入が増えています。 他の商用システムとの違いとしては、 - カスタマイズができる - オンプレミスでも運用できる - セットアップ、トレーニングフィーが無料 - コンタクトのデータに応じた従量課金がない といった点になります。他にもMautic Cloudがあります。フリーとプロがあって、サインアップから5分程度で利用可能です。 動作環境はLAMPスタックで、ライセンスはGPL v3になっています。ソースコードはGitHubで公開されており、日本人はコントリビュータが3名くらいといった規模です。最新リリースの2.1が2016/08で、3ヶ月に一回くらい大きなリリースが行われています。 2015年末くらいから日本語リソースが充実してきました。現在、翻訳はほぼ100%となっています。東京、名古屋、札幌でミートアップイベントをやっています。他にもSlackの日本語チャンネル、日本語フォーラムが立ち上がっています。 Mauticによって、誰でもすぐにマーケティングオートメーションがはじめられるようになりました。

MauticとAPI

Mauticでは以下のAPIを提供しています。 - REST API - Webhook - Plugin REST APIではOAuth2で認証してユーザ権限に対応したアクセス制御が可能です。PHP用のライブラリもあります。 Webhookでは特定のイベントが発生したタイミングでその情報をJSONデータとして設定したURLにポストします。 プラグインはほぼWebHookと同じ仕組みです。プラグインは標準で21個提供されています。

MAで何を解決したいのか?

スタンドアローンで運用するのではなく、既存のITインフラと接続し付加価値を生み出す仕組みが重要だと考えています。

APIを利用した例

  1. SFA/CRMとの連携
    Salesforce上の顧客データとMauticの連携
  2. ChatOps
    新しいコンタクトが追加されるとSlackにメッセージが来る
  3. CMS連携
    既存のWebサイトとの連携。例えばDrupalで登録するとMAにもデータが登録される。 Mauticによって誰でもMAが実現できるようになりました。自社のサービス、プロダクトと接続できるのでビジネスチャンスが広がるでしょう。

    Splunkでビジネスアナリティクス?世界的に有名なお客様の事例をご紹介します

    Splunk Service Japan Senior Partner Sales Engineer 小松原 貴司さま

Splunkにはログ解析だけでなく、ビジネスを伸ばす仕組みがあります。マシンデータをすべての人にアクセス可能に、便利なものに、そして価値あるものにというのが我々のポリシーです。 今回はその例を紹介していきます。

REST APIでデータを登録します。スマホアプリのすべてのデータをSplunkに送信しています。例えばスマホの上下を判断してヒートしているかどうかを判断したり、Splunkにデータを登録します。それによって飲み物や食べ物の消費が変化します。負けているチーム側は美男美女の売り子を送り込みます。ゲームの状況によってコーラ、ビールなどを調整します。 駐車場のデータも統合されているので、席の近くの駐車場を案内する仕組みがあります。

アメリカのゲーム会社、Ubisoftのバックエンドで使われている事例です。ユーザのジャンプなど、ゲーム内の動作すべてビッグデータに入っています。現在、ゲームの世界は殆どAPIベースになっています。それらを測定し、サービス単位の処理速度も分かります。ABテストをゲームの中で行っているのも分かります。その反応もSplunkで取れます。その結果、課金やポイント取得などをリアルタイムに可視化できるます。 エラーも分かります。すべてを直すのではなく、良く発生しているものから対応するのが現在のやり方です。他にもAPIの負荷予測システムがあります。それを越えた値が出ると、アラートが出るようになっています。

懇親会&LT

発表後は懇親会とLTがありました。今回は3人の登壇者がありました(お一人は非公開)。 資料はこちら

マーケティングとテクノロジーを組み合わせるとどんなことができるのか、注目の分野ではないでしょうか。懇親会でも大いに盛り上がっていました。

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