ServerlessDays Tokyo 2019 参加報告 - カンファレンス編

ネットワークサービス部 伊藤(@yoshiya_ito)です。10/21-22の2日間で開催された ServerlessDays Tokyo 2019 カンファレンスに参加・登壇しましたので、その模様をご紹介します。

ServerlessDaysとは?

ServerlessDaysは、サーバーレスアーキテクチャを用いたシステムの構築・運用における経験の共有を目的とした、コミュニティ主導でベンダーニュートラルな技術カンファレンスです。 https://tokyo.serverlessdays.io/

日本におけるServerlessの年次カンファレンスは、これまでServerlessconf Tokyoが2016年から開催されていましたが、今年から東京以外の都市での開催の要望から、SeverlessDaysに変更となっております。 もともとServerlessDaysはJeffConfという名で、ヨーロッパ各地で開催されていたカンファレンスでしたが、2018年にServerlessDaysに改名しているので、馴染みのない方も多数いらっしゃるのではないでしょうか?

経緯はこちら Goodbye JeffConf, hello ServerlessDays!!

SeverlessDaysのプログラム選考

ServerlessDaysで登壇するには、PapercallにてCall for Paper(CfP)に応募する必要があります。ServerlessDaysのプログラム選考では、Papercallの機能により匿名化された状態で選考が行われます。つまり、所属などを一切関係なく、コンテンツ勝負というわけです。 最終締め切りまでにCfPは全部で96件あり、招待講演・スポンサー講演を除いて、全部で13件(LT含む)が選ばれました。

SeverlessDays カンファレンス

ServerlessDays カンファレンスでは、サーバレスに関するTipsや事例、メガクラウドベンダーのアップデートなどざまざま発表が行われました。会場はTabloidで、310名の方々が参加されました。

とてもかっこいい会場。

発表会場もおしゃれ。

自分たちの発表と反応

伊藤(@yoshiya_ito)と松田(@take4mats)で「ISPがサーバレスに手を出した」というお題で発表しました。

発表の様子はこちら↓

私たちの発表内容の概要は以下の通りです。 NTTコミュニケーションズが提供するOCN v6アルファでは、MAP-E方式を採用したIPv4 over IPv6通信を行っています。 MAP-E方式では、宅内ブロードバンドルータが通信を開始する前にIPv4/IPv6のMAPルールを取得する必要があり、そのルール配信機能をサーバレスで開発したという話です。 IPv6が必須でキャリアグレードの信頼性を担保するために奔走した苦労話や、少人数で継続的な開発をするための工夫についてお話ししました。

発表スライドは下記にあるので、詳細はこちらをご覧ください。

発表中の反応Tweetを一部紹介します。

概ね好感触で、私たちとしては一安心。

その他のセッション

どれも素晴らしいトークでしたが、その中でも共有したいものについて触れます。

ゑびや/EBILAB

伊勢神宮にある創業100年以上の飲食店ゑびやの事例です。ゑびやは2012年以前までほかの老舗飲食店と同様に、そろばんをはじいて、会計処理を行っていました。つまりITにはほど遠い経営をなされていたわけです。 しかし、経営改善を目的として、データを活用した経営を目指すべく、Excelからはじまり、PowerBIや機械学習、そして、サーバレスを駆使する企業となりました。来客情報の可視化、来客・注文予測システムの構築により、フードロス減少・来客満足度向上を実現し、売り上げが2012年に比べ4.8倍となっています。サーバレスはすべてAzureで構築しており、世界のマイクロソフトのパートナーが一堂に会すMicrosoft Inspire 2019においても事例紹介なされています。

老舗飲食店がサーバレスで経営改革できている変遷が非常に面白く、さらにはすべてAzure提供のサービスで実現していたのが興味深かったです。

トヨタ自動車

トヨタ自動車の発表事例では、いまTOYOTAがコネクティッドカーという領域でどのようにサーバレスを活用しているのか紹介がありました。

車がインターネットに接続されるのが当たり前の時代に変わっていく中、TOYOTAは車載デバイスをインターネットを介して接続する必要がありました。そのコネクティッドサービスをサーバレスで開発されたという話です。TOYOTAがサーバレスを選んだ理由は3つあるそうです。

  • 車の利用時間(サーバへのアクセス数) 車の利用時間は波があり、昼は夜間の12倍の利用ともなります。常時稼働させるとアイドルタイムの無駄が大きい。
  • 車のライフサイクル 車のライフサイクルは平均8.5年であり、一度開発したものをアップデートしない=新たな価値を生まないということで、疎結合であるサーバレスであれば継続して開発が可能
  • より広い地域での提供 国ごとにシェアが異なり、シェアが小さい国では大きくリソースを確保することが困難。 ちいさく始めて必要になったらスケールがしやすい基盤が必要。

現在は数十人規模で開発しているとのことで、国内では最大規模級のサーバレス開発事例です。大規模サーバレス開発における課題と工夫についても紹介がありました。

  • アプリケーション開発量は少なくなったが、テストがしにくい CI/CDパイプラインで開発環境の整備を行い、単体テストはlocalstackで自動実行、サービス結合テストはkarateを利用されていました。
  • 各機能はシンプルだが、全体が見えにくい ロギング・分散トレーシングが重要で、cloudwatch logsとX-Rayを活用している。
  • 自動スケールは便利だが、制御すべき要素もある 外部サービスの呼び出しで必ず処理が完了するようにした結果、再試行で数千プロセスが同時動作となってしまった。

サーバレスにより価値のない無駄を削除することができたとして、運用コスト50%減により、運用専門部隊を新機能追加等に回すことができたとのこと。

私たちが少人数で開発していることもあり、大規模サーバレス開発を少し垣間見ることができたことはとても新鮮でした。

ダイキン工業

ダイキン工業では、サーバレスを活用して空調設備をIoTでつなぐ事例発表がありました。発表内容はサーバレスIoTシステムの開発に挑戦し、苦労した話とDynamoDBのランニングコストを削減のための工夫のお話しです。 ダイキン工業では、毎分500万アクセスを捌くためのIoT基盤構築をする必要があり、初期投資の削減と接続台数とクラウド利用料を連動させるためサーバレスを選択しました。 ただ、大量負荷がかかるシステムということもあり、コストを意識した設計が非常に重要で、設計ミスが青天井のコストとなり得ることが懸念だったとのこと。そのためDynamoDB設計ではコスト削減の工夫をし、試行錯誤でいろいろな設計を検証し、最もコスト最適な設計に行きついていました。

詳しくは資料が公開されていますので、こちらをご覧ください。 空調設備向けIoTシステムにおけるクラウドランニングコスト

終わりに

いろいろなカンファレンスに参加したことがありますが、 ServerlessDays Tokyoはとても勢いのあるカンファレンスで、運営スタッフも参加者も私にはキラキラ見えました。 今回は大企業での事例発表が複数あり、とても参考になりました。 また、発表したことにより、いろんな方々とつながり、外部ではありますが、サーバレス仲間が増えたことはうれしい限りです。 サーバレスはまだまだ道半ばの技術ですので、我々もサーバレスの発展に貢献していきたいと思っています。

最後に懇親会前の集合写真を載せておきます。

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