JANOG45 Meeting 参加報告

はじめまして、ネットワークサービス部 山本です。 1/22-24の3日間で開催されたJANOG45 Meeting in Sapporoに参加しましたので、その模様をご紹介します。

JANOG とは?

JANOGとはJApan Network Operators' Groupを意味し、インターネットに於ける技術的事項、および、それにまつわるオペレーションに関する事項を議論、検討、紹介することにより日本のインターネット技術者、および、利用者に貢献することを目的としたグループです。(JANOG 公式 より引用)

ものすごく簡単に言ってしまえば、インターネットを良くするために技術的な項目等を話し合うためのグループと言うことになります。

JANOG45 Meeting概要

JANOGの普段の活動はメールによるやりとりですが、年に2回実際に顔を合わせてのミーティングを行います。 開催場所は前々回は甲府、前回は神戸といったように地方を中心に開催されてきていますが、今回は北海道総合通信網株式会社様、 株式会社ネクステック様にホスト頂き、札幌プリンスホテル 国際館パミールで開催されました。

(JANOG45ミーティングフォトアルバムより)

入り口を入ると、スポンサー企業がずらりと並べられていました。今回も多くの企業に協賛いただいたようです。 (JANOG45ミーティングフォトアルバムより)

ミーティングには、1/24 16時時点の集計で 1529名 もの人が参加したそうです。

今回のMeetingでは多種多様なバックグラウンドを持った方が参加し様々な角度から議論ができるようにということで、「360° connect」がテーマとして掲げられていました。このテーマに沿い、一部のセッションでは同時通訳が行われるなど新しい試みが行われていました。この試みは海外からの参加者には大変感謝されていたようです。自分自身英語で行われたセミナーを聴講する際に、同時通訳のおかげで安心して臨めた経験があるだけにその気持ちはとてもよく理解できます。日本のネットワークが扱われることが多いですが、こうした試みを継続することで海外からの参加者が増え、より実りのあるミーティングにすることができるのではないかと思いました。

弊社もスポンサーとして協賛し、ブースの方では昨年9月にリリースした次世代インターコネクトサービス「Flexible InterConnect」を紹介させて頂きました。

また、私と同じ部署の先輩である伊藤 良哉と松田 丈司からは「OCNでサーバレス導入してみたけど、通信サービスでクラウド使うのってどうなのよ?」と題し、

  • ネットワークサービスに関してはオンプレでの構築が1st チョイスであった弊社においてなぜサーバーレスアーキテクチャを採用したのか
  • 3ヶ月という短納期で開発するために行った工夫や開発時の苦労
  • サービスリリース後のシステム構成の変遷

などについて共有させていただきました。

当日の発表資料はこちらに公開していますので、ご興味がある方はぜひご覧になってください。

この他にも、2つのセッションと1つのBoFで弊社グループの社員が登壇させていただきました。

  • 「フィッシングの現状とその対策」登壇者: カスタマーサービス部 山田 慎悟 資料はこちら

  • 「サービスプロバイダーでのEVPN導入事例」登壇者: NTTPCコミュニケーションズ 大塚 悠平 資料はこちら

  • 「サイバーセキュリティBoF #6 サイバー犯罪に悪用される日本国内の『踏み台』の実態と対応」登壇者: NTTコムエンジニアリング 近藤 和弘 資料はこちら

面白かったセッション

扱われるテーマは多岐にわたっており面白いセッションは数多くありましたが、ここからは個人的に面白かった/印象に残ったセッションを2つ紹介します。

地域内通信基盤としてのNTT-NGN折り返し機能

このセッションのテーマは、「一般家庭がインターネットに接続する際によく使われるNTT-NGNを緊急時の地域内情報通信のインフラとして使用するためにはどのような方策が必要になるか」ということでした。自然災害が多い昨今、緊急時により正確な情報を安易に入手できることの重要性はとても高いこともあり、登壇者/聴講者含め熱い議論が交わされていたことが強く印象に残りました。

総務省の「ネットワーク中立性研究会」の中間報告書 (公開資料)で言及されている通り、現在の日本のネットワークは都市部一極集中型の構成・トラヒック交換となっています。大規模災害により都市部を介した相互接続ができなくなった際に、災害情報をはじめとした多様なコンテンツの配信を継続するための手段としてNTT-NGNにおける折り返し機能に焦点が当てられました。

NTT東日本の石田さんから、NGNのIPv6対応状況や折り返し通信を可能とするフレッツ・v6オプション、NGNのトラフィック推移などが共有されました。

  • IPoEのトラフィックは前年同月比1.6倍で増加している
  • NGN全ユーザの約87%が折り返し通信が可能である

等、普段あまり聞くことができないNGN網内のトラフィック情報などが報告されました。

また、インターネットマルチフィードの外山さんからは、NGNが多数の通信事業者が相互接続していることからIX的に活用した場合を想定し、NGNの3つインタフェース(UNI, SNI, NNI)それぞれについてどれを使用するべきかについて検討した結果が共有されました。現状のNGNのインタフェースをそのまま使用しようとした場合、コストやBGPでの経路制御、ユーザー共用となるため帯域の確保が難しいというような観点で何らかの妥協をする必要があるとまとめられていました。

JANOG meetingでは登壇者からの発表後はミーティングらしく聴講者を含め議論の時間となります。会場からは下記のような今後より一層議論を深めるための提案や意見が挙げられていました。

  • (全体論で話しても)けりがつきにくいため、スモールスタートで議論を進めた方が良い
  • CATV事業者のために第4のインタフェースを用意して欲しい
  • 災害時だけではなく常時みられるようなサイトを用意するべきだ

普段業務としてインターネット接続サービスの開発を担当しており、自身もユーザーとしてNTT-NGNを利用している身としては、NTT-NGNの動向や様々な意見を生で聞くことができたという意味で非常に収穫となったセッションでした。

Faster SRv6 D-plane with XDP

前々回、前回のJANOGに引き続きLINEのバックボーンネットワークに関する取り組みが共有されたセッションです。 LINEでは複数のサービスを提供するにあたり、それぞれ個別のネットワークを構築することによる運用コスト増大が問題となっていたそうです。この問題に対する対処として、アンダーレイネットワークを共通化してオーバーレイをテナント分離することを検討し、SRv6の導入へと踏み切りました。

SRv6の実装はLinux kernelに対して行われており、SRv6のパケットを転送するためにソフトウェアによるFIBのルックアップを複数回行う必要がありました。このルックアップや関数呼び出しのコストがボトルネックとなり、普通のIPv6転送と比べて半分程度の性能しか出なかったとのことです。その課題への対処として、LINEの用途に特化した上でXDPによる改善がなされました。

SIDとSRv6パケットを処理させるVRFの関係はプロジェクトネットワークが構築された際に決まります。そこで、その関係を事前に計算し、XDPで処理する際にその結果を参照することで最適化が図りました。これによりFIBのルックアップの回数を減らすことができただけでなく、参照する必要があるVRFの数の削減も実現しました。その結果、改善前と比較して約3倍の性能向上が図られたとのことでした。

ちなみにこのセッションの内容ですが、発表者の齋藤さんがインターンの課題として行った取り組みだったそうで個人的には大変刺激を受けました。twitterでの反応を見てみると、インターンで取り組んだ課題のレベルの高さや、会社としてその結果を惜しみなくコミュニティに共有する姿勢を評価する声なども見られました。

終わりに

ブログでは触れることはできませんでしたが、今回のJANOG meetingも総務省をはじめとする官公庁の方々や、大学教員、JANOGの若者支援プログラムで参加した学生など、官民学 様々な立場の人が参加していました。実際に会場で参加してみて、参加する人は皆 立場や背景の違いによる意見の違いはあるがネットワークをより良くするためにはどのようにすべきか考えている点は変わらないということを知れた点が大きな学びでした。自身もいちエンジニアとして貢献できるよう努力していこうと思います。この他にも他社の抱えるの悩みといった普段職場で働くだけでは聞くことができない話を聞けたりなど、大変有意義な時間を過ごすことができました。今後もこのような機会があればぜひ参加していきたいと思います。

また、紹介できなかったプログラムの多くについて、 JANOG45公式では資料を公開しています。期間限定でプログラムを撮影した動画アーカイブなども公開されていますのでぜひ一度ご覧になってみてください。

早くもJANOG meeting46の情報も解禁されていますので、次回参加してみたいと思った方は是非スケジュールを調整の上参加してみてください!

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